このコンテンツはひとり広報の方々のヒアリングを通して、PRSJ広報委員会が編集制作しました

突然、広報を任されたら?ひとり広報でも迷わない仕事のすすめ方、学び方

1. はじめに

新型コロナ感染拡大によって大きく生活者の環境が変わった2020年代。SDGsへの取り組みやパーパスが問われるなかで、多くの企業でステークホルダーとのコミュニケーションの重要性を認識し、関係構築の役割を担う広報・PR活動に改めて注目が集まっている。
一方で既存の大企業からスタートアップまで、さまざまな組織風土や人材リソースの事情により、ひとりで広報業務を担う「ひとり広報」が顕在化し始めてきた。組織によっては、広報部門の立ち上げから実際の広報業務の実施まですべて「ひとり広報」が担っているケースも少なくない。
この記事では、ひとり広報の基本的な業務内容や進め方のポイント、特有の悩みやスキルアップ方法などを解説していく。

2. ひとり広報とは

ひとり広報とは、その名の通り、ひとりで広報・PR業務を担当すること。企業や団体の方針により「突然、ひとりで広報業務を任された」というパターンや、ベンチャー企業や中小企業などで「ひとりで広報部門を立ち上げなければならなくなった」という場合など、ひとり広報が生まれる経緯はさまざまだろう。なお、この記事では上記に加えて企業や団体の外部から採用するフリーランスの広報・PR担当者も「ひとり広報」と呼ぶ。

3. ひとり広報業務の進め方

ここでは、「もしあなたが広報をひとりで任されたら?」のケースの参考として、ひとり広報として業務を立ち上げる際の、主な5つのステップを紹介する。

ひとり広報業務の進め方

3-1.経営陣とコミュニケーションを図る

ひとり広報においてまず大切なのは、「企業の経営陣が、広報・PR活動を通じて各ステークホルダーに何を伝えたいか」を正しく把握することだ。そのうえで、実際の広報活動を通じてステークホルダーからの声も聞きながら、社会の中で自社がどうありたいか、どのような未来を描いていきたいか、経営陣と対話を繰り返しながら対外的な発信と自社へのフィードバックを継続的に進めていく。社内のステークホルダーとの関係づくりのためには、社内の各事業部のキーパーソンが誰なのか把握することが重要なのは言うまでもない。

3-2.PRの推進計画を立てる

PRの大きな方針や方向性が決まったら、ステークホルダーごとにいつまでに何を伝えたいかを可視化し、どのようにチェック改善をしていくのか、PDCAサイクルを策定する。新商品やリニューアル情報、コラボレーション企画などを含めた事業計画から人事計画をはじめとするインターナルの動きを把握し、計画と連動した広報・PR活動の年間スケジュールを立てていこう。自社にとって目玉となるようなトピックスを逃さぬよう、確実にコミュニケーションの好循環を図っていく。

3-3.企画を作成する

年間計画をもとに、個別の案件に応じた企画を作成していく。ステークホルダーのニーズをとらえつつ、企業の目指したいイメージを創出していく施策を、季節や時制などに合わせて計画しよう。どのメディアやプラットフォームで発信するかなど、PRの手段、チャネルの選定も重要になる。

3-4.基本プレスツールを作成する

メディア関係者に向けて、自社のプレスキットなどの基本ツールを準備する。一般的には企業情報や問い合わせ先、ロゴやアイコンなどの素材、商品やサービスについての紹介、過去のプレスリリース、メディア掲載実績などが含まれる。発信したい情報を正しく伝えるために常にアップデートしておこう。あわせて、マーケット規模や社会課題に対する自社商品・サービスの優位性、注目してほしいポイントなどを、データを引用しながらまとめておく。

3-5.社内へ発信する

社外に向けた発信準備を整えつつ、社内への発信も進めたい。広報・PR活動において、身内が自社に愛着を持ち、ファンになることが大きな後押しになるからだ。イントラネットや社内報、コーポレートブックなどを活用し、定期的に企業理念や経営方針を伝え、企業文化を醸成しながら社内コミュニケーションを活性化しよう。メディアへの掲載実績は、営業のアシストとしての活用が可能なうえ、社員のモチベーションの向上にもつながることから、必ず共有していきたい。

4.ひとり広報に必要なスキル

ひとり広報にはどのようなスキルが求められるか。
広報・PRの仕事は一般的に、自社を社会とつなげ、自社や商品・サービスの魅力を広く伝えることだ。そのために、コミュニケーション能力や文章力、プレゼンテーション能力は必要不可欠だろう。また、さまざまなツールがあふれ、情報が入り乱れるなかで、時代の流れやトレンドを把握する情報収集能力や、継続的なスキルアップも求められる。

5.ひとり広報によくあるつまずき、悩み

ここでは、ひとり広報が陥りやすいつまずきや、悩みについて見ていこう。
広報・PRの経験がないと「なにから手を付けていいのかわからない」「業務が多岐にわたり優先順位がつけられない」「メディアとのつながり方がわからない」「社内の情報が把握しきれない」といった悩みに直面することが多い。広報経験者でも、ひとりで多くの業務を担当することになり「インプットの時間が取れない」「横のつながりが作れない」「誰に相談したらいいかわからない」など、社内外における情報共有の難しさといった悩みが生じることもあるだろう。
それぞれの企業やフェーズによって千差万別であり、柔軟な対応が求められる広報・PRの仕事。ひとり広報として携わる場合は、より積極的に社内会議に参加したり、社外のコミュニティやセミナーなどに参加したりし、意識的に横のつながりを持つことが大切になる。

6.スキルアップのためにできること

継続的なスキルアップが求められるものの、日々の業務に追われてなかなかインプットの機会を得られず、また横のつながりも作りにくいひとり広報。ここでは、ひとり広報が効率的なスキルアップのためにできる2つの方法を紹介する。

 

6-1.セミナーへの参加

広報未経験で先任もおらず、右も左もわからないといった場合は、広報の基本的な概念から業務の具体的な進め方などを基礎から学べるセミナーに参加するのがおすすめだ。セミナーには単発のものや会員制のものがある。広報の経験がある人にとっても、日々変化するトレンドを効率的に把握できたり、新しいツールを学べたりするため、セミナーは心強い存在になるだろう。

セミナーの様子

6-2.コミュニティへの参加

広報の基礎を学びながら横のつながりも作りたいという場合は、コミュニティに参加するのが良いだろう。コミュニティ主催の定期的な勉強会などに参加することで、他社のケースを参考にしたり、悩みを共有したりしながら、スキルを磨くことができる。広報担当同士でつながりを作ることで企業同士のコラボレーションに発展することも。

 

委員会活動の様子
PRの啓発・普及を図るために1980年に発足した日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)でも、広報担当者とPR事業者がともに活動し、互いの知識や情報を共有しつつ、次代を担う広報・PRパーソンの人材育成に積極的に取り組んでいる。
2019年には、広報に携わる人材の多様化やひとり広報の増加を背景に「個人会員」制度がスタート。個人会員になると、委員会へ参加ができ、協会主催のセミナーやPRプランナー資格認定制度、海外のPR関連団体との連携やアワード運営といったPRSJの活動の企画に携わることができる。委員会活動を通じて横のつながりが得られるため、同じ目線で知識や経験、悩みを共有し合えたり、小さな企業だけでは難しいメディアへの提案の幅が広がったりと、ネットワークやビジネスチャンスを広げられるだろう。

▶ 日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)について詳しく知る

7.まとめ

時代の変化に伴い企業のあり方や役割そのものが変わりつつある昨今、広報・PR担当の役割も多様化し、その業務範囲はますます広がりを見せている。ひとり広報は、そうした状況下だからこそ、社内・社外のつながりを積極的に持ち、専門性を高めながら、時代に沿った活動を柔軟に推し進めていきたいものである。もし突然ひとり広報を任されたら、ぜひこの記事を参考にしていただければ幸いだ。

 

「ひとり広報実態調査」について

PRSJでは、注目が高まる“ひとり広報”の業務や意識、課題等の現状を探るために、“自社の広報を一人で担っている人”(エージェンシー等を除く)を対象に「ひとり広報実態調査」(2023年2月)を実施しました。

▶「ひとり広報実態調査」結果

 

PRSJの活動に参加してみませんか?

日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)では、ひとり広報として活動されている方に、ぜひ協会の活動に参加していただきたいと思います。個人会員として入会することで、セミナーへの参加、各委員会への参加が可能です。

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イベントセミナー

▶PRSJ“ひとり広報”MEET UP
“ひとり広報”の当事者と有識者が集まり、ひとり広報の現状と将来について語り合うイベントです。

 

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