広報PRの仕事を志し、願いかなって希望の仕事に就いた人たちは、一体どのようにしてその仕事にたどり着き、どんな風に働いているのか。
自分にぴったりの仕事だと直感
新卒で広報PRに配属された人たちは、一体どのように広報の仕事にたどり着き、今、どんな風に働いているのだろうか。デジタル社会をインフラで支える「インフラテック事業」を行うベイシス株式会社に2021年度新卒入社した広報1年目(取材時)、中出達也さんに話を聞いた。
広報志望ではなかったが、上司の言葉で決めた
中出さんは、もともと広報志望ではなかった。厳密に言えば、そんな選択肢が見えていた訳でもなかった。
ベイシスの場合、新入社員はオリエンテーションの後、社内の様々な部署に4日間ずつ仮配属され、その後、新入社員と各部門長が双方で希望を出し合って本配属が決まる。日程の都合上、仮配属されなかった部署はまとめてプレゼンが行われるのだが、その中に現在所属する経営企画部があった。
実はそれまで広報を担う部署はなく、広報専任の社員もいなかった。経営企画担当とシステム開発部の部長が本業の片手間にこなしていたが、この年から広報の専任を置くと決め、それを新入社員の中から選ぼうとしていたという。
「プレゼンした上司の経歴に驚き、その人柄に惚れ込み、この人の下で働けば、いっぱしのビジネスパーソンになれるはずだ、と思ったのが一つ。そして、話の中で、ベイシスとして初めて広報専任を募集しており、ここにアサインされればかなり大きな存在感を出せるのではないかと考えました。そして上司に必要なスキルは圧倒的なコミュニケーション能力と向上心の2つと説明されたとき、その2つを持つ自分にぴったりの仕事だと直感しました」。
中出さんは石川県で生まれ、高校時代まで何不自由のない生活を送り、そのまま地元の大学を卒業して地元の企業に勤め、地元に骨を埋めるのだろうと、漠然とした人生観を持っていた。しかし、地元の国立大学の受験に失敗したことで、このままではいけない、変わらなければいけないと思い立ち、猛勉強、一浪後に京都の私立大学に進学する。大学入学後、今までの保守的で閉鎖的な自分を変えたいと思い、そのために多くの人に出会って知見を広めたいと考え、小学生の頃から続けていたドラムを武器に、3つの軽音楽サークルを掛け持ちする。出られるイベント、ライブは全て参加しようと、夏休みには100曲をコピー、20本のライブに参加した。さらにバーテンダーやラーメン店員のアルバイト、3カ月間限定の喫茶店経営もこなす。こうした活動を通じて度胸と対人スキルを磨いていったという。
「バンド活動を通じて400人以上と交流したことで、圧倒的なコミュニケーション能力が自分に培われたという自負があった」ことから、広報を第1志望にし、採用された。
リリースのネタ探しのために「社内記者ナカデ、始めました」
ベイシスにはそれまで広報部門がなかったため、マニュアルやメディアリストなどは存在せず、上司とともに手探りのスタートになった。
「自分に与えられたミッションは、ベイシスを社会の土俵に上げること」と中出さん。BtoB企業は認知度が低い。業界では有名な企業でも、一般人にとっては名前を聞いても知らないと言われることがほとんどだ。
認知度を上げるための方策としては、メディアリレーションとプレスリリースの発信があるが、インフラ系BtoB企業の難しいところは、メーカーのように頻繁に新製品の開発がなく、リリースのネタに詰まること。そこで中出さんが取り組んだのが、『社内記者ナカデ、始めました』。
外の認知度を上げる前に社内の認知度を上げようと、社内報を始めた。ネタは社内で大々的に募集した。「『社内表彰されました』『お客様に好評でした』という部門アピールから、逆に、『どこそこの部門が何をしているか調べて欲しい』という要望まで受け付けています」。中出さん自身も管理職会議に潜り込み、積極的にネタを探す。
メディアリレーションでは、リリースの発信だけでなく、ツイッターでメディア関係者や経済アナリストに積極的にアプローチする。
「一度、DMからつながった経済アナリストの方に、社長の取材をしていただいたことがあります。きれいなスタジオで何台もカメラがある中、社長がインタビューされているのを見た時、伝わる楽しさ、伝える楽しさを実感しました。経済アナリストの方に、弊社の良さ、面白さが伝わり、取材したい、社長インタビューしたいと思ってもらい、それが実現したことに無常の喜びを感じました」。
広報に必要なのは?
「全身で会社に惚れ込むこと」
「自分の会社が好きで、その会社で働く人達が好きで、その魅力を世に広く伝えたい、こんな良い会社があることをもっと知ってほしい、という情熱が広報には必要だと感じています。広報は、会社に心底惚れ込んでいないとできない仕事だと思います。もちろん、高いコミュニケーション能力と向上心も必須です」。
広報部門の魅力は「経営に近いこと」と中出さんは言い切る。「大企業の場合、新卒社員が経営層と会話をする機会はなかなかないと思います。しかし、広報部門ならば社長インタビューをセッティングするために社長と打ち合わせし、取材にアテンドするなど、経営層との距離が近い。こんな経験、新卒1年目ではなかなかできないと思います」。経営層のインタビューを実現するためには、経営に関わる高度な情報を知る必要もある。非常に濃密な1年間だったと言う。
「上司からは3年分の成長を1年で果たしなさいと言われていますが、広報はまさにそれができるうってつけの部署だと実感しています」。
PRSJの活動に参加してみませんか?
▶ 日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)について詳しく知る
▶ 日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)の入会案内についてはこちら