日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)が主催する「定例研究会」は、広報・PRに携わる実務者が最新の知見を学ぶことを目的とした、会員向けの勉強会です。各回、第一線で活躍する講師を招き、実務に直結する情報を得られる貴重な機会となっています。

第236回となる今回は、2025年7月9日に開催され、講師には東洋経済新報社 総編集長の山田俊浩氏をお迎えしました。テーマは「経済メディアの最新デジタル戦略」。広報担当者にとっても多くの学びが得られる内容となりました。
広報委員有志メンバーが当日のセミナーの模様をレポートいたします。

講師略歴
株式会社東洋経済新報社 『東洋経済』総編集長 山田 俊浩 氏

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入社後、1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで編集局次長週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2025年3月から東洋経済総編集長。

「東洋経済」とは?

東洋経済新報社は、1895年創刊の『週刊東洋経済』をはじめとする経済専門メディアを展開する老舗出版社であり、企業や経済の深層を伝える報道に定評があります。近年では、月間2億PVを超える「東洋経済オンライン」も成長を遂げ、デジタル分野での存在感を高めています。2025年3月には、紙とデジタル両方の編集を統括するポジションとして、同社初の「総編集長」職が新設され、山田氏がその任に就かれました。これにより、『週刊東洋経済』と『東洋経済オンライン』の両媒体が一体となった編集体制がスタートし、より柔軟で戦略的な情報発信が進められています。

講演のポイント

講演では「デジタルファーストの基本方針」を中心に、編集体制や特集記事の制作スケジュールなどを丁寧に説明いただきました。雑誌の発行部数減少が加速する中で、同社では特集記事を核に、紙とデジタルの統合編集を進めています。週刊東洋経済のページ数は年々減少しているものの、特集記事や魅力的な連載記事など質の高いコンテンツの提供を重視しています。
また近年、動画領域にも注力し、記者による顔出しのニュース解説動画やナレーション付き記事など、多様なスタイルの動画コンテンツを展開しているといいます。
<東洋経済オンラインYouTubeチャンネル>
https://youtube.com/@toyokeizaitv?si=CzPaBcvqWKruKbVD

最後に山田氏は、東洋経済が重視している点として、決算短信などデータやファクトを基盤に、記者会見やニュースリリースだけで記事化せず、独自の分析を加えた深掘り型の報道に力を入れていると強調されました。

質疑応答

質疑応答では、参加者からの実務的な質問が寄せられました。
「記者との関係づくりで意識すべき広報対応とは?」
「編集部が注目しているテーマは?」
「媒体ごとに担当をつける方針を変更されたのでしょうか?」

まとめ

今回の研究会は、経済メディアの最前線で起きている変化を学び、広報の在り方を改めて見つめ直す機会となりました。東洋経済が掲げる「速報ではなく、価値ある深掘り記事を重視する」という編集方針は、私たち広報担当者にとっても非常に示唆に富むものでした。
また、企業との継続的な関係構築を大切にし、単発の情報発信にとどまらず、信頼に基づく取材とコンテンツ制作を追求する姿勢も印象的でした。
広報がメディアと向き合う際には、「情報提供」だけでなく、「価値提供」が求められることを、改めて実感する機会となりました。

文責:広報委員 岡内礼奈((株)電通PRコンサルティング)

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