※所属・役職は2023年2月1時点
審査員長
本田 哲也 株式会社本田事務所 |
今年のPRアワードグランプリでまず喜ばしかったことは、過去最高タイとなる107件のエントリーをいただいたことです。これはひとえに、ここまで本アワードに関わってきた皆様のご尽力の賜物であるとともに、日本社会におけるパブリックリレーションズへの理解と関心が進み多様な取り組みが生まれていることの証でもあるでしょう。
審査員長として、今年は、(規定の審査クライテリアに加えて)以下の3つの視座を示させていただきました。
1、「パーパス(社会的存在意義)」はあるか?:
社会に向き合った、社会的な意義のある活動になっているか。
2、「自分(たち)らしさ」が感じられるか?:
当該企業/ブランドがその活動をするオーセンティシティ(正当性・真正性)があるか。
3、「巻き込む力」は発揮されたか?:
多様なステークホルダーを巻き込み、共創が起こるような設計がなされ、活動の持続性につながっているか。
本年のエントリーのレベルは高く、とりわけ最終審査に進まれた7つのエントリーにおいては、そのほとんどがこれらの観点を十分に満たしていたと思います。中でも、グランプリに輝きました『共助×共創による、これからの公共サービスの実現~マイカー乗り合い交通「ノッカル」挑戦の3年~』では、富山県朝日町の現代日本を象徴する社会課題に対し、博報堂らしい「生活者発想」が発揮された事業開発であり、地域住民はもとより既存の交通事業者などマルチステークホルダーの巻き込みも成されていました。
パブリックリレーションズは実践的な活動であると同時に、ひとつの「発想法」だとも言えます。商品や事業をPRのノウハウで話題化させ成果を出すのも重要ながら、そもそもPR発想が“組み込まれた”事業開発や取り組みが、年々増えている印象です。それだけ審査の議論もより多角的に行う必要がありますが、何よりダイナミックな取り組みが生まれることは意義深く、嬉しいことです。あらためて受賞された企業・組織団体の皆様に敬意を表し、これからも日本のすべてのパブリックリレーションズの取り組みが素晴らしい成果を生むことを願っています。
審査員(氏名50音順)
阿久津 聡 一橋大学大学院 |
今回は、ウクライナ情勢など国内外で社会・経済状況が不安定な中での開催となりました。審査会の中でも多様なライフスタイルへの啓発活動、グローバルな人道支援、社会課題への解決などPRの社会的存在意義を問う議論がなされていました。近年の傾向としてパーパスを重要なよりどころとして多様なステークホルダーを巻き込み、継続的な活動として発信し、共感を得ているものが多くあったように思います。審査員として素晴らしい作品に出会えたことに感謝しています。
伊東 由理 Zホールディングス株式会社 |
各賞を受賞された皆さま、おめでとうございます。ソーシャルグッドを意識したコミュニケーションというのは近年のトレンドですが、なぜその会社が行うのか、社会的価値と企業価値を結びつけられていた案件に期待と評価が寄せられたように思います。事業を作るような大きな取組もあれば、見方を少し変えるだけで大きな意味を生み出す、という案件もあり、PRの大いなる可能性と価値を改めて認識する機会となりました。
こうした素晴らしい取り組みに、PRに関わる多くの方が触れることで、意義深いPRの活動がより大きくなっていくことを期待するとともに、皆様と共に精進できることを、イチPRパーソンとして楽しみにしています。
根本 陽平 株式会社電通PRコンサルティング |
今年は過去最大のエントリー数ということで、PRへの注目度の高さを改めて実感する年となりました。世界が大きく変化している中で、これまでのあたりまえを見直し新しい概念へアップデートしていくことは時代からの要請であり、どう世の中との合意形成をしていくか、PRプロフェッショナルの力が必要です。そんな中、エントリーされたプロジェクトは多岐におよんでいました。もはやソーシャルグッドであることは必須となり、実務家としても大変刺激的でした。
アワードは過去を振り返るものと思われがちですが、未来の方向をたしかめる場でもあると思います。惜しくも今回は受賞とならなかったプロジェクトも、本アワードを定点観測・フィードバックの機会と捉え、来年またぜひエントリーいただきたいです。
PRという仕事の魅力は、このエントリーそれぞれが形成していると思います。ぜひ皆さんと一緒に議論し高め合っていくことで、業界発展の一助になれば幸いです。
河 炅珍 國學院大學 |
PRとは何かを明確に理解し、活動を展開する組織が増えていることを実感しました。PRは、いわゆる慈善事業とは異なります。PRの担い手は自ら置かれた状況を直視することからはじまり、社会と他者に目を向け、共通の課題を立て、解決する過程を通じて社会的承認と支持を得ることができます。
受賞作品はもちろん、今回のエントリーには、このような特徴を十分に意識し、計画された活動が多く見られました。社会課題を単なる道具とみなすのではなく、自己と他者の問題を真摯に受け止め、共に生きる関係を作っていく姿勢が求められる時代です。昨年に続き、PRのあり方や可能性について深く考えさせられる機会となりました。
浜田 敬子 ジャーナリスト 元AERA編集長 |
2022年も多くの応募をいただき、ありがとうございました。大賞を受賞された博報堂と富山県朝日町の「ノッカル」をはじめ、22年はより社会の課題、世界の課題と真正面から向き合った作品が多かったと感じています。課題解決型のものは「やっているフリ」をするためのPRというものも残念ながらまだまだ少なくありません。そのような類のものは、今や消費者や社会から見抜かれる時代になっているにもかかわらず。しかし、今年応募された作品は事業として課題に取り組み、それをPRという手法によって、より社会に広めているものが多く、時代の変化を感じると共に、PRの可能性も改めて感じることになりました。
牧 志穂 株式会社博報堂 |
企業がビジネスを通して社会課題に向き合う事が、もはや当たり前になり、エントリーでも様々なチャレンジが見られました。しかし本質的な所から課題解決を目指すとなると、一発アイディアで全部解決というわけにはいかず、向き合うステークホルダーが多く、こちらを通せばあちらが通らぬという事が起こります。その中で、グランプリ・ゴールドを受賞したエントリーは、多様な価値観・意見に向き合いながらプロジェクトを推進する、PRパーソンとしての力量や丹力が感じられる素晴らしい内容で、いちPRパーソンとして学ばせていただきました。ありがとうございます!
矢嶋 聡 株式会社メルカリ |
まずは受賞された皆さま、おめでとうございます。そして残念ながら選に漏れてしまった皆さまもご応募ありがとうございました。
今回初めて審査に参加させていただきましたが、いずれのエントリにおいてもパブリックリレーションズの考え方がしっかりと盛り込まれており、レベルの高さを感じました。
私は事業会社で広報実務に携わる立場として、特に1) 一時の打ち上げ花火・パブリシティに留まらず、きちんと実効性が担保されているか? 2) (短期的な成果に繋がらなくても)継続性・持続性があるか?という点を中心に見させていただきましたが、今回受賞されたエントリについてはいずれもその点を十二分に満たしているものだったと思います。
様々な企業・組織団体においてパブリックリレーションズの考え方や取り組みが浸透していくことは、組織や個人だけでなく社会全体の幸せに繋がると私は信じています。今回のアワードを一つの機会として、今後ますますパブリックリレーションズが普及発展していくことを期待しています。
横田 和明 株式会社井之上パブリックリレーションズ |
ご受賞された皆さま、おめでとうございます。
過去最多に並ぶエントリーシートから、コロナ禍やウクライナ戦争がもたらす深刻な影響、国内の少子高齢化やダイバーシティ不全などから生じている痛み、市場創造への挑戦や成熟市場での新たな活路など、様々な社会課題や経営課題が事業主体の視点から鮮明に浮かび上がってきました。
各課題に、パブリック・リレーションズの力でどのように立ち向かうのか。
特に今回は、
・発想の起点からリスク管理も交えたパブリック・リレーションズの視点を取り入れる
・予測不能な事態に前向きに対応し、想定していなかったステークホルダーも包含しながら進んでいく
・既存のプロダクトやサービスの価値付けを大胆に転換しながら、従来の関係性のあり方を修正していく
点が印象的でした。
混沌とした世界の中で、自らの理念を具現化して突き進み続ける企業としての意志の強さと、時に国境も超えて社会の紐帯を強めるパブリック・リレーションズの力に希望の光を感じました。
今回入選を逃したエントリーの中には惜しい案件も数多くありました。来年もぜひ挑戦していただきたいです。
吉宮 拓 株式会社プラップジャパン |
個人的には5回目のPRアワード審査でしたが、今回もパブリックリレーションズの新たな時代を切り開くエントリーに多く出会うことができ、大変有意義な時間となりました。PRに携わる者として、こうした貴重な機会をいただけたことに改めて感謝申し上げます。
今回最も印象に残った点は、プロジェクトに関わるメンバーの皆様の「熱い想い」です。エントリーの傾向からも、社会課題と向き合った意義のあるプロジェクトは年々増えていますが、今回グランプリを受賞した「ノッカル」プロジェクトのように、周囲を巻き込み、社会と自者双方によい影響を与えている案件には、熱意をもって推進する担当者の力がありました。
コミュニケーションの手法やツールは進化すれども、最終的には発信する側も受け止める側も人間です。ゆえに熱い想いを含めた人間力こそがコミュニケーションの礎であり、世の中を動かしていくのだなということを改めて気づかされた審査でもありました。