不妊当事者の声で“新しいあたり前”を創る 「不妊や不妊治療の理解」実現に向けて |
不妊治療を受けるカップルが増加する中、体外受精など特定不妊治療は未だ自費診療だった。この課題に対して、不妊経験者の生の声を軸に、“不妊治療が選択できる社会”の実現に向けた取り組みを展開。2022年4月より不妊治療に公的医療保険を適用する方針が決定した。
日本で不妊に悩むカップルは3 組に1 組
治療を断念する人も後を絶たない状況
日本で、不妊治療や不妊検査を受けたカップルは5.5組に1組、不妊に悩んだカップルは3組に1組と言われている。
実は、不妊治療には4つの負担が生じている。第1は「身体的負担」、第2は「時間的負担」、第3「精神的負担」、そして第4は高額な治療費による「経済的負担」である。ところが、これまで不妊治療の多くは健康保険適応外の自費診療。体外受精となると1回の治療費に40〜60万円以上もかかるような状況にあった。そのため、不妊に悩む当事者は費用の工面に苦心、治療費を理由に諦めるカップルや、治療を断念する人も後を絶たなかった。
「経済損失は1,345億円超」「平均治療費50万円」
各種課題を具体的に可視化
この状況を変えるため、不妊当事者・経験者14万人の「隠れた声なき声を可視化」、「不妊治療に伴う経済損失」や「若い世代の経済負担に伴う治療中断」の現実について、定性的な声に止めず、定量的かつ具体的に可視化。問題の深刻さや重大性を顕在化させると共に、少子化という社会課題においても、対応すべきニーズであると理解を促すように情報を発信していった。
新たなルールの方向性と具現化の方法を提唱
保険適用と職場環境の改善を実現
政治的アプローチとして、潜在的な声を集約して「不妊治療への保険適用」や医療情報開示などの様々な要望書を提出すると共に、議員向け勉強会も実施。法人・企業には、仕事と不妊治療の両立に向けた、不妊治療に理解ある職場創りを提言するガイドラインを作成した。産官学の協力者との強固な関係を基に新たなルールの方向性と具現化の方法も提唱していった結果、2022年4月より不妊治療に公的医療保険を適用する方針が決定した。
Voice from STAFF
NPO法人Fine 理事長 松本亜樹子
「一人の声は小さくても、10人、100人、1,000人と集まれば、聞いてくれる人がいる」と信じて、とにかく声を集め、届けたい先に送ることを心掛けてきました。地道にやってきた活動を表彰して頂き、本当に光栄に思います。