ゴールド

事業主体:ヤフー株式会社
エントリー会社:株式会社電通
応募部門:コーポレート・コミュニケーション部門


視覚障がい者がネットでの選挙情報入手において不平等な状況におかれているという問題を解決するため、視覚障がい者の監修の下、彼らが利用しやすい選挙情報サイトを制作した。また、このサイトはこの社会課題を、晴眼者に対して啓発する設計となっていた。

聞こえる選挙サイト画面

31万人の視覚障がい者は、ネットでの選挙情報入手に対して障壁を感じていた。彼らの9割はスクリーンリーダーと呼ばれるソフトを使用し、サイト上の情報を音声に変換することでネットから情報を入手している。しかし、このソフトは画像を読み上げることが出来ないという弱点を抱えていた。さらに「選挙公報」はネット掲載に際して画像形式とすることが義務付けられていた。

我々はこの問題を解決するために、都議会議員・衆議院選挙の際に、特別な選挙情報サイト「聞こえる選挙」をオープンした。このサイトは、視覚障がい者の利用しやすさを突き詰めたサイトとなっていた。具体的には、この情報サイトは「選挙公報」をベースとして、スクリーンリーダーの弱点である画像や映像を用いずにテキストだけで制作されており、彼らの利用に最適化されていた。

さらに、このサイトは視覚障がい者が使い易いだけでなく、この選挙問題を啓発するために、デザイン上の工夫も加えられていた。具体的には、この選挙情報サイトは黒い背景に黒い文字で選挙情報が記載されており、一見するとどの階層・ページにも情報がないように見える。このデザインの狙いは、情報がすぐそこにあるにもかかわらず入手できない視覚障がい者の現状を表現すること。晴眼者は、「選挙公報」を期待してサイトを訪問するが、あるはずの情報を入手できない不便な状態を体感する。そしてその後に、この状況が視覚障がい者の現状を模していることを知り、この知られざる問題に気づく設計になっていた。

この工夫の結果、サイト上では選挙情報入手における、晴眼者と視覚障がい者の立場が入れ替わった。これによって、ネットにおける選挙情報格差という見過ごされていた社会課題に対して、視覚障がい者にはソリューションが、晴眼者には気づきが提供され、1つのプロジェクトで問題提起・解決が同時に達成された。

文・(株)電通 鈴木 瑛


Voice from STAFF

(株)電通 鈴木 瑛

チーム一体となって、社会課題に取り組んだ結果、大きな成果を残すことが出来た。クライアント・エージェンシーの垣根を超えてワンチームとなって取り組むことの大切さに改めて気づくきっかけとなった。これからもこのチームで困難な課題に取り組んでいきたいと考えている。