グランプリ

事業主体:大阪府住宅供給公社
エントリー会社:大阪府住宅供給公社/株式会社オズマピーアール
応募カテゴリー:コーポレート・コミュニケーション


若者離れによる入居者の減少など、課題が山積していた大阪・茶山台団地。その衰退に歯止めをかけるべく、大阪府住宅供給公社では、住民を「団地再生に共に取り組むパートナー」と捉え、独自の課題解決策を企画・実行する共創型団地再生プロジェクトに取り組んだ。

日本全国で顕在化する団地の衰退
若者離れ、住民減少、高齢化が問題に

高度経済成長期に整備され、最盛期には約16万5,000人もの住民がいた大阪府南部の泉北ニュータウン。しかし、現在の住居者数は約12万人と4万人以上も減少している。大阪府住宅供給公社(以下、公社)が運営する茶山台団地も例外ではなく、全戸(約1,000戸)満室の時期もあったが、近年は若者の団地離れなどもあって150戸が空き家となり、さらに住民の半数近くが65歳以上であることから地域のコミュニティ活力も低下。急激な人口減少から近隣スーパーは撤退するなど、負の連鎖に陥っていた。

「住民=まちづくりの担い手」を主役にした
共創型インナーリレーション

このような負の連鎖を断ち切るため、公社は住民共創型の団地再生プロジェクトをスタートした。住民を「サービスの受益者」ではなく「団地再生に共に取り組むパートナー」であると再定義。団地再生の主たる担い手はあくまでも住民であり、公社は住民をサポートするコーディネーター役に徹するという意識のもと、住民との対話の中から課題を見つけ、共に解決に取り組む共創体制を築いた。

笑顔とアイデアの集まる
茶山台としょかん

集会所を持寄型図書館にした「茶山台としょかん」。受託事業者は団地に住みながら運営し、住民との交流を通してニーズを把握していった。現在は年間延べ2,000人が訪れる団地の枠を超えた地域の交流拠点となり、住民が主体となったさまざまなイベントや取り組みが行われている。

団地deウェディング

住民が主体となって企画し、住民の結婚をお祝いするために開いた団地内の手づくりウェディングパーティー。このイベントの開催・成功が、自分たちの団地をより良くしていこうとする機運の高まる転換点となった。

全国から注目を集める
独自の団地再生方程式

住民との対話で分かった「リアルな課題・ニーズ」に、これまでの賃貸住宅の慣習では考えられない「非常識なアイデア」を掛け合わせて、独自の解決策を生み出すことに成功。これらの事例をアーンドメディアやオウンドメディアで発信して全国話題化したことは、公社のレピュテーション向上にも繋がった。

DIY工房「DIYのいえ」

若年層入居者増と住民の住戸への愛着増を狙って、全戸を退去時原状回復免除のDIY可能物件にした。さらに、団地の一室にDIYの道具を揃え、技能を持った住民がインストラクターとしてサポートするDIY工房「DIYのいえ」を開設。DIYを通じて新たなコミュニティが生まれている。

丘の上の総菜屋さん「やまわけキッチン」

「買物に困っている」「交流できる場所がほしい」という住民の声をきっかけに、若手住民が団地の一室をイートイン可の総菜店にすることを企画。住戸を飲食店へ転用する際の規約や手続きのハードルを乗り越え、資金をクラウドファンディングで調達し、延べ180名の住民がDIYに参加して店舗が完成した。買物難民・孤食などの社会課題を解決する取り組みとして各所から注目を集めている。

若年層入居者の増加で、入居率も上昇
住民の75%がプロジェクト継続を希望

このような団地再生の取り組みが功を奏し、現在は新規入居者に占める若年層の割合が増加したとともに、入居率も上昇して団地に活気が戻ってきた。75%が今後も団地再生プロジェクトを続けてほしいと回答するなど、住民からも好評だ。加えて、国、自治体、大学、NPOほか、さまざまな団体が視察に訪れるなど、全国からも大きく注目を集めている。
公社は2019年12月、2050年に向けた長期ビジョンを発表。「住宅の供給から生活の供給へ」「団地から地域・まちへ」「公社単独からパートナーシップへ」という事業方針を掲げた。公社では、今後も日本の将来をリードする“まちづくり”、一人ひとりの生活に寄り添った“笑顔のくらしづくり”を行っていく。

文・株式会社オズマピーアール 久保田 敦


Voice from STAFF

大阪府住宅供給公社
総務企画部 企画室 経営企画課 広報戦略グループ 小原旭登

「日本全国で顕在化している団地の衰退」という課題に対し、住民の皆様と徹底的に向き合うことで協力体制を築き上げ、さまざまな取り組みを実行しました。このプロジェクトは住民の皆様の協力があったからこそ実現した取り組みです。ご協力いただいた住民の皆様をはじめ、地域の関係団体の皆様に御礼を申し上げたいと思います。また、この取り組みが一つの参考事例となり、先駆的事例として全国に広まれば幸いです。

株式会社オズマピーアール
関西支社 関西本部 コミュニケーション・ディレクター 久保田 敦

「住民との共創による団地再生」という、多くの人びとの手により推進された一朝一夕ではなし遂げられないこのプロジェクトで「PRアワードグランプリ」をいただけたこと、プロジェクトメンバーとして関われたことに感謝・誇りの念を感じます。大阪府住宅供給公社様が次の長期ビジョンを掲げ、先の未来へと歩みを進めているように、自らの固定概念を超え続けるPRパーソンであり続けていきたいと考えています。