審査員長
井口 理
株式会社電通パブリックリレーションズ
執行役員
今回のPRアワードはコロナ禍もあり、エントリーも少なく、また守り一辺倒の型が多いのでは思っていましたが、それぞれ大きく予想を裏切られました。エントリーは例年以上、逆に攻めの姿勢の案件が多かったのはうれしい誤算でした。
審査会は昨年ご一緒した方も多く、気心が知れている分、逆にそれぞれの意見を厳しく戦わせる場となりました。しかしそれこそが我々審査員の学びでもあります。エントリーを評価する立場でありながら、自身の考え方が同様に客観的に評価されるという切磋琢磨の場となりました。
最後のグランプリ選考では、意見が割れたというよりも、それぞれの審査員が両エントリーに甲乙つけがたい、どこに視点をおいて、どの立場で評価すべきなのかという根本部分にまで議論が及びました。これは決着がつかない、ついたとしても選出した結果への我々の満足感が生まれないと考え、懸賞委員会と協議し、異例のダブルグランプリと相成りました。
今回も審査を通じて、各施策を評価するだけでなく、我々PR業界に何ができるか、また何をすべきかを改めて考える機会をいただけたと感じています。事業会社とともに、PR会社もこの世の中に対して何ができるのか、その指標を見つけ共有することができたのではないかと自負しています。
審査員(氏名50音順)
阿久津 聡 一橋大学大学院 |
今回の審査会はコロナ禍での開催となりましたが、だからこそ、PRの社会的存在意義と向き合う良い機会になったという面もあったと感じました。審査の中でも、パーパス・ドリブンであるかという視点から様々な議論がなされました。
受賞した作品には、理念の中でも社会的に意義があるパーパスを重要な拠り所として発信し、共感を得ているものが多かったように思います。審査員として素晴らしい作品に出会えたことに感謝しながら、次回さらにレベルアップした作品に出逢えることを期待しております。
金子 みどり アマゾンジャパン合同会社 |
40年という歴史を経て日本のパブリック・リレーションズの基盤を支えてきた日本パブリックリレーションズ協会のアワード。審査員として今年も多様な意見がぶつかり合い、共通の解を見出すという熱い議論に参加させていただきました。事業者とPR会社そして学術界から構成されている審査委員会だからこそ可能な広い視野と深い考察による審査プロセスが踏めたのだと思います。
コロナ禍の2020年は、人々の日常・産業・政治・教育・医療・物流などなどすべてが不確実性の中で暗いトンネルの中を手探りで歩んでいくような年でした。元旦、東京の見事な青空を仰ぎながら、先の見えない不安よりも、自らが新しい日常を積極的に築いていこうと気持ちを新たにしました。
今年のアワードにおけるエントリーも、コロナ禍だからこそ自らが動くという積極的な姿勢が根底にあり、私自身勇気付けられる内容でした。
井之上パブリックリレーションズおよびダイキン工業というダブル受賞についてですが、実はコロナ禍で新しい行動を取ったというより、それぞれの組織の長期的ビジョンに基づいたものでした。井之上パブリックリレーションズは、PR会社としてクライアントの成長をサポートするだけでなく、自らが「より良い社会のために」というビジョンの下、これまでもパブリック・リレーションズ全体の底上げに貢献されてきました。私自身もこよなく愛するブランドの一つであるダイキン工業は、「空気と環境」において社会的価値を創造することをビジョンとしています。平時から、長期的視点に立って積み重ねてきた自社の強みが、パンデミックのような状況下でも迅速に社会が必要としていることに取り組むことを可能にし、一過性でない社会的価値を創造する広がりをみせたということなのだと思います。
2020年パブリック・リレーションズの仕事を通し、自社のAmazonにおいても同様の発見がありました。これまでと変わらないビジョンの下に迅速に愚直に課題解決を日々積み重ねた一年でしたが、「これまでと変わらない、そしてこれからも変わらない」という再確認をした年でもありました。明快なビジョンの下に長期的視点で組織全体が歩み続けていく、その中でのパブリック・リレーションズもそうありたいと思います。
受賞された皆さまおめでとうございました。また受賞に至らなかったエントリーにも素晴らしい価値がたくさん盛り込まれていました。2021年のアワードにもチャレンジをお願いします。
田上 智子 株式会社 刀 |
今年のPRアワードは、昨年以上に企業やブランドのパーパスにもとづく受賞作が多くあったように感じました。
とくにグランプリの2作品は、コロナ禍という未曾有の危機に際して、自社の利益だけでなく、本業に基づく「 パブリックへの 貢献」を真摯に行い、発信したすばらしい事例でした。
「コロナ禍」という特殊な環境で、通常以上にインターナルコミュニケーションに尽力された事業会社からのエントリーも多数あり、奨励賞を差し上げることができたことも今年らしいPRアワードの発展のかたちだと感じました。
企業やブランドのパーパスにもとづくPR活動も、インターナルPRも、PRが経営の中枢にあるべきであるという戦略発想からうまれるものであり、日本でもこうした真の「パブリックリレーションズ」が定着しつつあることをうれしく思います。
昨年に引き続き、多様性のある審査員団の活発な議論によって、事例の理解が深まったり、(受賞へ)敗者復活するエントリーがでてきたりしました。私も他の審査員の方々のおかげで事例の理解を深めたことも多くありました。
受賞された皆さん、改めましておめでとうございます。今年は残念だった皆さんも、ぜひ継続してチャレンジを続けて下さい。
永渕 雄也 株式会社博報堂 |
PRアワードグランプリ2020にて、受賞された皆様、本当におめでとうございます。
今年度は、新型コロナウィルスによっておきた環境変化に向き合った業務とそれとは別に従来からの課題に取り組まれたものとが混在し、評価を難しくしていたと思います。個人的には、従来から取り組まれていた業務において、コロナ禍の影響を受けつつもやりきった業務にもっとも敬意を評したいと思いました。また、奨励賞にもありましたようなインナーコミュニケーション領域での応募が再び目立ってくるなど、PRテクノロジーの活用機会が拡大しているなと実感させられました。環境変化のときこそ、変化を乗りこなすプロであるPRパーソンの真価が問われるときですので、どんどん領域拡大するPRの好事例が増えていくのが楽しみです。
古田 大輔 ジャーナリスト/メディアコラボ代表 |
パンデミックという歴史的な異常事態の中でのアワードでしたが、2つのグランプリを中心に、PRが企業活動に直結しつつ、社会にポジティブな影響を与える力をより強く印象づける年になりました。パブリックとリレーションズ、共に人と人が繋がることがその根本にあります。新型コロナウイルスの影響で、人と会うことすら難しいときにこそ、その視点の重要さが問われ、PRがその真価を発揮する時代なのだと思います。
本田 哲也 株式会社本田事務所 |
あらためまして、エントリーいただいた皆さま、ありがとうございました。そして受賞した皆さま、誠におめでとうございます。審査員の一員として、本当にコロナ禍でアワードを決行できてよかったなと思います。パンデミックの負の影響は計りしれませんが、ひとつ前向きなことがあるとすれば、企業の社会的意識や存在意義への関心を大きく向上させたことです。直接的にコロナに関連せずとも、今回のエントリー群からは、それを強く感じました。まさに、「ピンチはチャンス」です。今回の経験が、より素晴らしいパブリックリレーションズの実践につながることを願っています。
松本 理永 株式会社サニーサイドアップ |
未曾有の出来事に見舞われた2020。
刻々と変わる情勢の中で、一旦は本アワードの開催自体もどうすべきか議論されましたが、こうした時こそ、コミュニケーションの重要性が問われること、手法や、表現は変わっても、真に伝えるべきことを明確にし、伝え、巻き込み、うねりを生み出していくPRの動きは止まらず、奮闘しているPRパーソンたちもいるはず、との思いで、たとえ応募が少なくても開催しよう、という結論にいたりました。
蓋をあけてみれば、昨年を上回る数の応募があり、その内容もすでにニューノーマルを真っ向から捉えて取り込んだものから、COVID19の影響を直接的に感じさせないものなど、さまざまな素晴らしい作品に出逢うこととなりました。エントリーいただいた皆様、あらためてありがとうございました。
常に、人の心と行いを動かしていくのはPRの力であると信じています。
横田 和明 株式会社井之上パブリックリレーションズ |
コロナ禍の最中、紡ぎだされたエントリーシート。
一枚一枚を拝読する中、心を動かされる事案には、
以下の要素がありました。
•未曽有の危機や社会変化の中で生じる誰かの”痛み”から課題を発見する感性
•自分たちは社会において何を成す存在なのかを明らかにしていく意志
•目的を達成するためにアプローチすべき様々なステークホルダーへの想像力
•状況の変化に合わせた修正と諦めずに工夫を続ける粘り強き実行力
先行き不透明な中でも、人が介在し、”リレーションシップ・マネジメント”で思い描いたことを実現させ、社会をより良い方向に一歩動かしていく。数々の応募案件から、パブリック・リレーションズがもたらす希望の力を感じました。
吉宮 拓 株式会社プラップジャパン |
コロナ禍ながらも多くのプロジェクトがエントリーされ、個人的にも興味の尽きない審査でした。
特徴としては、新型コロナに対し機動力の高い活動が評価された一方で、社会性の高いテーマに関して議論を投げかけることで自社へ共感を引き寄せるようなプロジェクトが複数エントリーされ、一つの型として定着しつつあると感じます。
手法では単なるメディア露出やSNSでの拡散にとどまらず、プロジェクトに賛同する他社をも巻き込み、話題化を図る案件が目立ちました。
いずれもパブリックリレーションズの本質を捉えたアプローチで、PRの実務家である私たちにとって大いに刺激となる内容でした。