株式会社プラップジャパン
取締役
吉宮拓氏
皆さんは「パブリックリレーションズ(PR)」に出会った時のことを覚えていますか?
世の中には「PR」という言葉が溢れていますが、その本質に触れた瞬間は私にとって忘れられない記憶です。
30年ほど前、当時の私はマスコミや広告に何となく興味を持つ、ごく普通の就活生でした。さまざまな会社を回るなかで偶然参加した当社の説明会。「こんな仕事があるのか」と目を開かされたことを今でも覚えています。マスコミ業界に憧れはあったものの、OB訪問や面接を通じて芽生えた、自分には少し違うかもしれないという戸惑い。一方で、PRには社会を俯瞰する視点や多様な立場の人たちをつなぐ役割があり、その可能性に強く惹かれました。白状すれば、PRが知る人ぞ知る存在だったことも、その時の私には魅力的に映った理由のひとつです。
入社後、私にPRの要諦を叩き込んでくれたのは最初の上司でした。彼の口癖は「アンチテーゼを提示しろ」。つまり、物事を批判的に捉え、考え抜くことを求められました。クライアントに安易に迎合したコメントをすれば、徹底的に叱られました。もちろん、ただ反対意見を述べればよいわけではありません。ファクトに基づき、しがらみに流されずに意見を出す姿勢こそがPRコンサルタントの価値だと学びました。この姿勢は、経営者に対峙し、社会的な視点を踏まえて献策しなければならない広報部門の方々にとっても重要ではないでしょうか。
では、これからのPRパーソンはどうあるべきか。AIが効率的に情報を集め、瞬時にもっともらしい提案をする今だからこそ、「アンチテーゼを唱える力」、すなわち異なる立場から物事を見る視点は、ますます大事になります。多様なステークホルダーと合意形成を図るうえでも、この力は欠かせません。これまでは現場での試行錯誤を通じて培われてきましたが、AIによってその過程さえも省かれる時代です。それゆえ、こうした本質的な力を養える環境を整えていくことは、当社にとっても業界にとっても喫緊の課題だと感じています。
このような意識を背景に、今年2月、当協会のPR業部会では「10年後のPR業~PRビジネスは生き残れるか」をテーマにパネルディスカッションを行いました。そこでは同じ思いを持つメンバーが会社の垣根を越えて意見を交わし、大いに盛り上がりました。次回は、PR業部会だけでなく企業部会の方々も巻き込んで、さらに深掘りしたイベントにする予定です。ぜひご期待ください。
最後に思うのは、こうして「PRに出会った瞬間」を語っている時点で、未だPRの価値が社会に十分浸透していないという現実です。私自身もPRが知る人ぞ知る仕事では満足しなくなりました。だからこそ、実務家として、協会理事としてその価値を一人でも多くの方に体感していただくことが私の役割の一つだと考えています。
これからも皆さまの力をお借りしながら尽力してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。