公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会
理事長 山口 恭正
新年あけましておめでとうございます。
今年は、巳年、脱皮して再生する象徴の干支と言われますが、日本経済の再生も期待したい所です。2023年がAI 元年とするなら、今年2025年は、AI エージェント元年とも言われ、生成AIから行動AIの時代へ、将来は、AGIのステージに突入すると予想されており、ヒトのパートナーに近づいていきます。特に、我々PRパーソンにとっても、この頼もしいパートナーをいかに活用し生産性を上げられるかが試される時代に入ったのではないでしょうか?また、再生のきっかけにもなろうというのが、今年の4月13日から開催、世界から英知が集まる大阪万博、さらに、グラングリーン大阪の開発は、万博来訪者を待ち受けるかのようなタイミングで、希望に満ちた年になることを願います。
他方、旧年より続く懸念材料も多くあります。世界は、各地の紛争とその結果引き起こされたインフレなど、また、国内は、昨年はGDPをドイツに抜かれ、今年は、インドにも抜かれる予想もあります。人口減少を割り引いても、一人当たりGDPも低下が止まらず、また、日本の「幸福度」実感ランキングも低迷しています。経済の低迷は労働生産性の遅れ、幸せ実感の低迷は、人間関係の難しさが大きな要因のように見えます。久しく「分断社会」とも言われ、偽情報の蔓延で誰もがだまされる時代になり、人びとに不安と不信を広げる要因にもなってくるリスクもあります。
今の所、AIそのものが幸せを生み出す直接的な装置にはなっているわけではないですが、上手に使えば、我々の質問に対しての答えの選択肢を用意してくれ、生産効率をあげられるのではないかと期待します。ですが、それを評価し、さらなる修正指示をするのは、ヒトの方です。我々がどういう問いかけをしていくべきか、未来の理想形と足元のギャップをどう解消していけばいいか、その課題を具体的に特定していくチカラが問われています。
特定の目的達成の効率、タイパやコスパに特化しすぎてしまうと、アルゴリズムやSNSによって、人びとは無意識に小集団に分断され、こちらの集団の常識は、あちらでは非常識という問題も起こりがちです。結果、全体として、却って非効率に陥り、生産性や成長も見込めず、最悪は不信状態に陥ることもあります。集団を超えてウィンウィンの利益調整しながら全体として共存共栄していくには、双方向のコミュニケーションの量と質を上げていく必要がありますが、その意味でも、ますますパブリックリレーションズが重要な役割を担う時代になってきたと実感しております。
答えにたどり着くためのハウツーの効率は上げ、労力を省力化しながら、余力が増えた分を、人間的な問いかけ(Why)や社会的な課題(What)についての建設的な対話、コミュニケーションに振り向けることが重要です。AIを効率化のために使いながらも、ヒトや企業は、生活者の気持ちを読み取り、また複数のステークホルダーからの共感を最大化する問いかけ、課題設定の創造力は、PRパーソンが担うべき役割ではないかと思っております。今までの古い殻と慣習を脱ぎ捨て、成長と幸せの実感づくりの二刀流が新しい常識となる元年にしていければと思います。本年もよろしくお願いいたします。
令和7年1月吉日