開催レポート:2026年3月17日実施

来年、日本とルクセンブルクは外交樹立100周年という大きな節目を迎える。ヨーロッパの小国でありながら、国民1人あたりのGDPが世界トップレベルを誇るルクセンブルク。その背景には、時代に合わせた柔軟な産業構造の転換と、「欧州単一市場へのゲートウェイ」としての戦略的オープンネスがある。今回のセミナーでは、駐日ルクセンブルク大使館・貿易投資事務所のメンバーを迎え、同国の国家ブランディング戦略やスタートアップ支援の最前線、2025年大阪・関西万博で話題となったルクセンブルクパビリオンの取り組み、そして循環経済(サーキュラーエコノミー)に関するプロジェクトについて紹介された。
小さな国がいかにして世界で存在感を示し、サステナビリティという地球規模の課題に取り組んでいるのか。本レポートでは、その具体的な取り組みとコミュニケーションのあり方を紹介する。
登壇者
・駐日ルクセンブルク大公国大使 ミシェル•レーシュ
・ルクセンブルク貿易投資事務所 エグゼクティブ・ディレクター 松野 百合子
・ルクセンブルク貿易投資事務所 副所長 中丸 直哉
・ルクセンブルク貿易投資事務所(大阪・関西万博 ルクセンブルクパビリオン 館長アシスタント) 星 文絵
「Let’s make it happen」——小国ならではの柔軟な国家ブランディングと産業転換
冒頭でレーシュ大使は、ルクセンブルクが世界で唯一の大公国であり、日本と皇室・大公家の交流を通じて長年の友好関係を築いてきたことを強調した。近年も大阪・関西万博への参加や、2027年横浜グリーンエキスポへの出展決定など、関係はさらに深化している。人口約68万人の小国でありながら、居住者の約半数、労働人口の約7割が外国人という高い多様性を持ち、平均3.6カ国語が話される。鉄鋼から金融、ICT、宇宙、データエコノミーへと産業を転換させてきたことが、高い一人当たりGDPを支えているという。また国家ブランディングでは「Let’s make it happen」を掲げ、歴史・文化を発信する大使館と、経済・投資を担う貿易投資事務所でメッセージを明確に分担し、効率的な発信体制を構築している。
欧州のゲートウェイとしての機能とイノベーションの促進
大阪・関西万博のルクセンブルクパビリオンでは「Doki Doki-ときめくルクセンブルク」をテーマに掲げ、約37万8,000人が来場し、83%という高い来場者満足度を記録した。PR的観点で特筆すべきは、同パビリオンが海外館として最も早く使用許可を得たことで、メディアからの初期の注目を一身に集めた点である。さらに、吉村大阪府知事が来館時に名物の特大ソーセージについてSNSへ投稿した結果、362万回以上再生される大バズりとなり、連日最長5〜6時間待ちの行列を生み出すほどの熱狂を巻き起こした。

パビリオンのもう一つの大きな柱が「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の実践である。設計段階から「解体を前提」とし、欧州から建築資材を運ぶのではなく日本国内で調達・再利用するというコンセプトを貫いた。膜屋根はアップサイクル製品へ、コンクリート基礎はリゾート施設へ、外壁は建築型枠へ、鉄骨は福祉施設へと再利用され、サステナビリティを実装した事例として注目を集めた。この実践的なアプローチが高く評価され、同パビリオンは万博でBIE(博覧会国際事務局)より「サステナビリティ賞」を受賞した。
大阪・関西万博で話題になった貴重なワインを通じた交流会
本セミナー後には、登壇者を交えた交流会が行われ、万博でも提供されたルクセンブルクワインが振る舞われた。白ワインが有名な同国のワインを片手に、参加者はスタートアップ支援やパビリオン運営の裏側について活発に意見交換を行った。登壇者と参加者が垣根なく交流する場となり、同国のオープンな姿勢を体感する機会となった。


まとめ
本セミナーを通じて見えてきたのは、ルクセンブルクの未来志向のビジョンとその実行力である。単なる情報発信にとどまらず、ビジネスのゲートウェイとして機能し、万博を通じて循環経済という課題解決モデルを提示している点が印象的であった。
参加者からは、「これほど先進的な取り組みが行われているとは知らなかった」「一般的な情報として広く出回っていないからこそ、こうした場で直接知ることの価値を感じた」といった声も聞かれ、関心度の高い層に対して適切に情報を届ける設計の巧みさが印象に残った。
一貫した情報発信とともに、必要な情報を適切な場で届ける柔軟性は、PRが単なる情報伝達を超え、社会的なレガシーを生み出す力を持つことを示している。来年の外交樹立100周年、そして2027年に横浜で開催されるグリーンエクスポへの出展に向け、ルクセンブルクのコミュニケーション戦略からは今後も目が離せない。
文責・株式会社サニーサイドアップ 高橋日菜