読売新聞経済部長 中澤氏が語る「経済報道」と「広報の方々に期待すること」

第239回定例研究会:2026年3月17日実施

2026年3月17日に開催された第239回定例研究会は、読売新聞東京本社 経済部長 中澤謙介氏が講師として登壇されました。テーマは「読売新聞の経済報道と広報の方々に期待すること」。新聞業界がデジタル化の進展とともに変化する中で、読売新聞が何を重視して経済報道を行っているのか、また記者の視点から広報の方々との関係のあり方について、現場の実情を交えてお話しいただきました。

講師略歴

読売新聞東京本社 経済部長 中澤謙介(なかざわ けんすけ)氏

1996年読売新聞社入社。盛岡支局を経て2002年から経済部で証券、電機、金融、流通などを担当。2010年から13年までロンドン特派員として欧州債務危機を取材。その後、経済部デスク、秘書部長などを経て、23年から25年までメディア局事業部長としてニュースコンテンツのデジタルビジネスを担当し、2025年6月より現職。

講演内容

1. 紙面重視の姿勢

読売新聞には、紙面、読売新聞オンライン、ダウ・ジョーンズ読売新聞Proの3つの媒体があります。中でも紙面は、読売新聞において引き続き中核媒体と位置づけられており、「ニュースの重み付けをして掲載できるという特徴がある。ネットやSNSを含めいろんな情報が溢れる中で、バランス良くかつ効率良くニュースを読んでもらえる」と、紙面の良さを説明されました。

そのため、広報側も単に情報を伝えるのではなく、社会的な文脈やニュースバリューを意識した質の高いプレスリリースや情報提供を行なう必要があると考えられます。

2. 経済部の編集ならびに取材方針

読売新聞経済部の編集方針について、「『ストレートニュース』と『特ダネ』を重視しています。やはり新聞の基本がそこにあると考えているからです。」と説明されました。

「ストレートニュース」を重視する理由としては、記録性の観点を挙げられました。読売新聞は創刊以来150年分の紙面を蓄積しており、日々の出来事を記録し続けること自体が新聞の重要な役割であると意義づけられました。

その「特ダネ」を支えているのが、「夜討ち朝駆け」を徹底する取材方針です。記者は企業の経営者と1対1で向き合い、対話の中から情報を引き出す、その過程が取材力の強化に一番繋がると考えているとのことです。

一方、「特ダネ」については、「いち早く企業の情報に接することは、働く人や取引先、金融市場にも影響を与え、経営判断にも大きく関わる。可能な限り早く報じることが我々のスタンスである」としたうえで、「特ダネが大きければ大きいほど、企業行動や利害関係者への影響が大きく、その分価値が高い」と語られました。

3. 広報の方々に求められる視点

企業広報の方々に対しては、まず自社および業界に精通することの重要性を示されました。これは、記者が知らない情報を提供し、業界全体の動向を踏まえて記者と議論できる存在であることが、記者が自ずと話をしたくなる取材相手として認識され、信頼関係の構築につながると考えられているからです。
また、迅速なレスポンスも重要な要素です。突発的な取材依頼や確認事項に対して即応できる担当者は、記者にとって頼りになる存在となり、継続的な関係につながるとのことです。
さらに、記者の理解を深めるために、工場や店舗、発電所などの現場をそこに込められた意図や工夫と共に直に見せることの有効性も指摘されました。

質疑応答

「広報経験のない広報部長へのアドバイス」
「経済部の担当分野ごとの人員体制
「ダウ・ジョーンズとの連携の経緯」
「読売333と記者の関わり方」など

まとめ:パブリックリレーションズの可能性

講演の中で中澤氏は、「広報の方は経営層を始め社内から、メディアにおける露出のコントロールについてあれこれプレッシャーを受けることがあろうかと思いますが、我々は報じることに社会的な意義があり、それが事実だと確認できたものについては、書かせていただいています。メディアは全然コントロールできません、と経営層の期待値を思い切り下げていただくことが一番いい。まずはメディアに対して正しい認識を持っていただくことが広報の方も社内で仕事しやすくなると思います」と強調されました。
「広告」と同様に捉える誤った認識を持つ方もいる中で、「メディアはコントロールできない」という前提が日本社会の中で広まれば、公平性の中でこそ機能するパブリックリレーションズが、より「会社と社会との接点」を設計する役割として、価値を最大限に発揮するだろうという可能性を感じた素晴らしい講演でした。

文責:井之上パブリックリレーションズ 大下英人