株式会社マテリアル 取締役 尾上 玲円奈 氏

先日登壇した虎ノ門広告祭2026のセッション「みんなで話したい、これからのPR。」で、パブリックリレーションズはつまるところ、「愛、怒り、ロック」ではないかと話しました。
会場では少し笑いも起きましたが、私はかなり本気です。PRの仕事を長く続けてきて、手法や媒体はめまぐるしく変わっても、人の心を動かし、世の中を動かすPRの仕事の芯にあるものは、この3つのキーワードで語り尽くせると考えています。
まず、愛。
PRの仕事は、何かを好きになるところから始まります。クライアントの商品やサービス、そこで働く人たち、その会社が大切にしてきたこと。製品のスペックだけではなく、作り手自身も言葉にできていない価値を見つけ出すには、まず担当者としてとことん好きになって、しつこく知ろうとするしかない。その上で、その先にいる生活者に想いを馳せること、つまり、愛がカギになります。「どう売るか」の前に「関わる人たちや社会にとって、本当にいいことなのか」を問い続けること。愛のない情報は、どれだけ露出しても人の心には残りません。
次に、怒り。
意外に聞こえるかもしれませんが、良いPRの起点には、たいてい怒りがあります。世の中の不条理、誰かが我慢させられている当たり前、見過ごされている課題。「これはおかしい」「このままでいいはずがない」という感情こそが、社会に投げかける問いの強さになります。共感だけでは、人は動きません。怒りを、誰かを攻撃する力ではなく、世の中を前に進める力に変える。それがパブリックリレーションズの役割だと思っています。そしてこの怒りは、自分たちの仕事にも向けるべきものです。「まあ、こんなものだろう」という凡庸さに、きちんと怒れるかどうか。チームで工夫を重ねて、「こんなもんじゃねえ」を複層的に、より良い形にできるのがPRの仕事の醍醐味だと思います。
そして、ロック。
ロックとは、既存の文脈に対する反骨であり、自分たちの音を鳴らす覚悟です。前例通り、業界の慣習通りにやっていては、世の中の空気や不合理、非効率は変わりません。ロックの名曲がたった3つのコードで何百万人の心を揺さぶるように、本当に伝えたいことは驚くほどシンプルでも、そこに熱量が乗ったときには多くの人を巻き込むことができます。上手くやることより、鳴らすべき音を、鳴らすべきタイミングで、全力で鳴らすことが大切です。
愛があるから、怒れる。怒りがあるから、ロックになれる。ロックだから、愛が届く。3つはバラバラではなく、三位一体で、一つの循環として捉えることもできます。
情報が溢れ、誰もが発信者になった時代だからこそ、私たちPRパーソンに求められているのは、器用さよりもこうした循環を自分の中に持ち続けることだと確信しています。
愛、怒り、ロック。尾上個人も、これら3つを胸に、PR協会、PR業界の皆さんと一緒に、より良い社会のための仕事ができたらと考えています。虎ノ門広告祭2026のセッション「みんなで話したい、これからのPR。」には、業界の重鎮、博報堂の嶋浩一郎執行役員と、GOの三浦崇宏代表、博報堂PR局の財田恵里部長にもゲストとしてご登壇いただきました。(皆さま、有り難うございました!)観客参加型&公開収録で、まさにパブリックリレーションズ的に話した内容は、博報堂で官民共創クリエイティブスタジオ「PROJECT_Vega」を率いる近山知史エグゼクティブクリエイティブディレクターと、私尾上玲円奈の二人で毎週金曜日11時にPodcastとSpotifyで放送している「みんなのPR秘密結社」で、2027年1月以降に聴くことができます。登壇者皆で、これからのPRについてワイワイ話していますので、興味がある皆さんに是非ご視聴いただければと思います。
最後になりましたが、日本PR協会「第15回通常総会」で理事に選任いただき有り難うございました。これまで諸先輩が築いてこられたパブリックリレーションズの信頼の礎を受け継ぎ、職責を全うしながら、次世代を担うPRプロフェッショナルの育成にも力を尽くしてまいります。これから会員の皆さまと共に考え、共に学んでいければと考えていますので、今後とも、ご指導のほど、宜しくお願いいたします。