テレビ報道の現場から学ぶ、情報発信とメディアリレーションズ

テレビ東京「WBS」豊島キャスター 講演(2026年7月21日実施)

2026年7月21日、国際・交流委員会は、大手町・住友商事(株)にて会員同士のネットワークを深めるための恒例イベント「2026年度情報交換会(新入会員歓迎会)」を開催しました。当日は総勢100名以上の会員が参加し、新規会員企業13社17名の皆さまにもご参加いただきました。新規会員企業の皆さまからご挨拶をいただく場面もあり、新たなつながりを育む機会となりました。

基調講演にご登壇いただいたのはテレビ東京の経済番組「ワールドビジネスサテライト(WBS)」等でメインキャスターを務める豊島晋作氏。「メディアと広報の関係の在り方、WBSとテレ東BIZの『伝え方』」と題したご講演では、豊島氏から報道現場のリアルや、視聴者を惹きつける情報発信の極意、そして企業広報とメディアのあるべき関係性について、ユーモアを交えた刺激的なお話が展開されました。

報道の最前線:現場での危機対応と緊迫感

大学院で国際政治を研究された豊島氏は、テレビ東京入社後、番組PR業務を経てロンドン支局長とモスクワ支局長を4年近く兼務し、ヨーロッパからロシア、アフリカまで広大なエリアをカバーされていました。講演では、ヨーロッパ駐在時代に遭遇したテロ事件の現場での緊迫したエピソードが披露されました。 現地の特殊部隊による犯人捜索が続く中、現場でリポートをしていた豊島氏は、武装警察から銃のレーザーポインターを当てられ、爆発物を身に着けていないことを確認するため、上着をたくし上げる(リフトする)よう指示されたといいます。国際情勢の変化により取材に制限のかかる国・地域も増えている中、危険と隣り合わせでも現地に赴いてレポートすることの重要性が語られました。

視聴者の関心を惹きつける「映像(画)」の力

また「テレ東BIZ」やYouTubeなどの動画メディアと、地上波テレビ番組の視聴習慣の違いについても触れ「日本国内において恒常的に、100万人、200万人が同時に視聴するメディアは、まだ現れていない。」と、“中の人”ならではの分析もご披露いただきました。そのうえで豊島氏が最も重視しているのが「映像(画)で伝える力」です。

「視聴者は必ずしもずっと集中してテレビ画面を見ているわけではない。帰宅後に疲れた状態で何となくテレビをつける視聴者の手を止めるためには、人目を惹くような工夫が必要不可欠です」

例えば、ある大手小売企業の惣菜リニューアルを巡る社長と料理長の対立を取材した際、ただ会話を撮るのではなく、カメラの角度や高さを変え、両者の視線を左右に分けることで、セリフがなくても無意識に対立構造が伝わるような映像作りを実践したそうです。ディレクター経験を持つ同氏ならではの視点です。

メディアと企業広報の理想的な関係:「晴れの日も雨の日も」

企業とメディアの関係構築について、豊島氏は「晴れの日も雨の日も」お付き合いを続けることの重要性を強調されました。不祥事や危機が発生した際に、一切の連絡を絶ち完全にドアを閉めてしまう企業がある一方で、平時だけでなく困難な時にもコミュニケーションを絶やさない広報の姿勢は「けっこうなディレクターが覚えています」(豊島氏)。

また自社のニュースを取り上げてもらうための工夫として、「なぜ今日なのか」という背景づくりや、「1社単独のPR(点)」で終わらせるのではなく、競合他社や業界全体の動向と絡めて「社会の大きな動き(面)」としてストーリー化することの有効性も指摘されました。過去に海外製家電の新製品発表の際に、同じく海外ブランドの商品の動向に加え、国内メーカーの動向を取材して対立構造を描いたことで、番組でも長尺で紹介できたことなどが明かされました。

情報の引き算:遠くへ届くメッセージの作り方

講演の終盤では、効果的なメッセージの伝え方についても言及がありました。ある省庁が作成した文字がびっしりと詰め込まれたスライドと、ある大手通信企業の「利益が5倍になった」ことだけを端的に示すシンプルなスライドを対比させ、情報を伝えすぎようとすると、かえって伝わりにくくなるジレンマが説明されました。「伝えるメッセージが多ければ情報量は増えるが届く距離は縮まり、メッセージを絞り込めばより遠くまで届く」というトレードオフの関係を見極めることこそが、広報プロフェッショナルに求められる役割であると語られました。

まとめ

質疑応答では、地方から東京のメディアにアピールする方法について質問が上がりました。これに対し豊島氏からは、地方特有の出来事を「全国的な社会課題の解決策」として位置づけることや、全国初の試みとして見出しを作りやすくするなど、点と点を繋いで全国区のストーリーに昇華させる視点が重要であるとアドバイスがありました。

メディア最前線のリアルな視点から、情報をどのように整理し、誰にどう届けるべきか。本講演は、広報担当者にとって日々の情報発信のあり方と、メディアリレーションズの本質を改めて見つめ直す大変貴重な機会となりました。

文責:国際・交流委員会 副委員長 飯田征樹