グランプリ
事業主体:大和ハウス工業株式会社
エントリー会社:株式会社電通/株式会社電通パブリックリレーションズ
応募部門:ソーシャル・コミュニケーション部門
「家事シェアハウス」商品開発のきっかけとなった、女性を悩ませる「名もなき家事」。 この原因となる家事の総量に対する意識のギャップを、調査を通じて「見える化」。 圧倒的な共感と拡散を呼び起こし、男女間における家事負担の不平等な現状に一石を投じた。
女性一人が悩み続ける、「名もなき家事」
共働き世帯が、専業主婦世帯を上回ったのは22年前の1997年であり、現在は1188万世帯を超えている。(総務省「労働力調査特別調査」「労働力調査」)しかしながら内閣府の発表によると、家事育児にかける時間は、妻が夫の7.5倍。欧米各国でも、軒並み女性に負担はかかっているものの、約2倍に収まる。夫の家事負担が極端に低く、妻が家事(+育児)の多くを担っているのが、日本の現状である。
家事参加を巡る議論のときにSNS上で必ず起こるのが、「家事をしているのに妻に叱られる」夫と「家事をしているつもりの夫に憤る」妻。それぞれのエピソードが数多く語られ、メディアでもこの「すれ違い」が常に取り上げられている。NPO 法人tadaima! は「夫や他の家族が気付かない家事の存在」により、夫と妻に存在する、家事の総量に対する意識のギャップに注目。「脱ぎっぱなしの靴下を拾う」「トイレットペーパーを換える、捨てる」「洗った洗濯物をしまう」など他の家族に気付 かれず、妻一人がこなすその家事を、「名もなき家事」と呼んだ。
富山発、「名もなき家事」を軽減する家事シェアハウス
この「名もなき家事」の軽減に、「『家』自体でサポートや貢献ができないか」という思いから開発されたのが「家事シェアハウス」だ。生活動線を工夫することで家族が自然と家事に参加。妻の家事負担が減り、家族と過ごす時間を多く取れる。家族が家事に参加し、「名もなき家事」の存在に気が付くことで、真の「家事シェア」を促すための商品である。この商品を 開発したのは富山支店の女性チームだ。自身も妻であり母であるメンバーたちは、家づくりのコンセプトから設計、顧客へのプレゼンや販促を一貫して担当。支店限定商品は評判を呼び、中部エリアでテスト販売。女性客からの圧倒的な反響を受け、2017年1月より全国発売に至る。この商品の販売促進に当たって、PRチームが注目したのは開発当初から念頭に置かれた「名もなき家事」であり、この「名もなき家事」自体の認知拡大が、解決策としての「家事シェアハウス」のPRにつながると推測した。
調査で明らかになった、「家事シェア」意識と実態のギャップ
活動開始にあたり最初に行ったのは、「共働き世帯の男女」を対象に「『名もなき家事』の視覚化」を目的とした調査だ。妻 以外が気付かない「名もなき家事」も含む家事を30項目設定、「これらを家事と考えるか否か、やっているか」を調査し、家事に対する意識と参加率を男女別に明らかにした。家事参加率、夫「3夫:7妻」、妻「1夫:9妻」が最多回答。「名もなき家事」も含む家事30項目のうち、「実際にやっている」家事の割合は9割で妻が多く、夫が多いと回答した家事は1割程度・・・など夫の参加意識と実態のギャップが明確となった。このギャップをまとめた調査リリースを起点に、PR用のドキュメント動画や共働き主婦を対象にした先行見学会などを実施した。
男女を含めた大反響と、結果に後押しされ、継続される活動
調査結果をまとめたリリースは大きな反響を呼び、NHKなど全国ネットの番組や中央紙での特集記事を含めて、多くのメディアに取り上げられた。そしてそれを見た多くの妻たちの賛同する声と、夫たちの反省の言葉が、SNS上で拡散された。PR動画は、2カ月で160万回再生を突破。見学会への来場や販売にも好影響を与え、2018年9月末までで、400棟(168億円)の「家事シェアハウス」を販売。国際PR協会のゴールデ ンワールドアワードをはじめとした国際賞を受賞した。また、「男性が家事の当事者であることを理解促進」したことが評価され、厚生労働省「イクメン企業アワード2018 グランプリ」を大和ハウス工業が受賞した。2017年よりスタートした「名もなき家事」撲滅に向けた活動は、2019年現在も続いている。
文・(株)電通パブリックリレーションズ 藤田・碇山
Voice from STAFF
(株)電通パブリックリレーションズ 藤田実穂、碇山光一
最初に富山の開発者チームを取材しましたが、商品と「名もなき家事」撲滅に対する熱い思いをひしひしと感じました。この思いの最大化がもっとも大切であると考え、調査企画を中心としたコミュニケーションに取り組みました。我々エージェントだけでなく、「『名もなき家事』をなくすことが第一」「むしろ商品の名前が出なくても良い」と大和ハウス工業様が積極的に参加いただ いたことが、多くの反響と結果につながったと感じております。