第4回企業部会セミナー開催レポート(12月19日実施)
2025年12月19日に開催された第4回企業部会セミナーでは、企業のスポーツ支援をどのように社業へ結び付けるかをテーマに、三井不動産株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、長瀬産業株式会社、サミット株式会社の4社から、スポーツ広報に取り組むご担当者・責任者の皆様をお招きし、パネルディスカッションを開催しました。本テーマに高い関心を持つ41名が参加した会場では、社員そしてお客様等の巻き込み、効果測定等、各社での取り組みが具体的に語られ、登壇者・参加者の活発な意見交換につながりました。

開始にあたり

会の冒頭、モデレーターを務めるエバラ食品工業株式会社広報IR部長の永井正太郎氏より、スポーツ支援は既に多くの企業が取り組むテーマであり協賛の枠を超え、社業への生かし方を探ることが今後の広報にとって重要テーマである旨のコメントがありました。エバラ食品は、サッカーチームの川崎フロンターレのユニフォームスポンサー、アイスホッケーチーム横浜GRITSのスポンサーをしており、永井氏の広報チームにはアイスホッケーの選手も所属していて、自身にとってもスポーツ広報活動に生かしていくことがテーマである旨、お話がありました。
三井不動産株式会社 広報部 ブランドマネジメントグループ 栗田 智仁氏

三井不動産の栗田氏からは、同社が2015年に東京オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナーとなったことを起点に、バスケットボール、スポーツクライミング、車いすラグビー、ニュージーランドのラグビー協会などへ協賛を広げてきた経緯が紹介されました。協賛テーマの選定には、露出機会、重点を置いているアリーナ事業との親和性、男女の競技人口のバランスなどが考慮されているといいます。
同社は「スポーツをまちづくりに生かす」戦略を推進しており、三井不動産が運営する商業施設やオフィスビルのスペースで、多様なスポーツイベントや試合を展開。例えば、オリンピック期間中には壁面に選手の肖像を掲出し街全体で盛り上げる「シティドレッシング」を行うなど、まちとスポーツの融合を図る取り組みが特徴だと話しました。さらに、LaLa arenaの運営開始や東京ドームのグループ化など、スポーツ施設そのものの設立・運営も加速しており、スポーツを軸としたまちの魅力づくりを一体的に推進していることが共有されました。
指標としては、企業好感度や「挑戦する企業」といった目指す企業イメージのスコアを年2回の調査で継続的に把握しているとのことです。社内でもメダリストによる報告会や、社員ボランティアの参加を通じてインターナルコミュニケーションが大きく活性化していると述べ、スポーツを“体験できる場”として活かすことが社内外双方に強い価値を生むとまとめました。
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
広報部長 山本 良子氏

あいおいニッセイ同和損保の山本氏からは、事故による障がい者の社会復帰を支えるという損害保険事業を行う企業としての社会的責任からパラスポーツ支援に踏み出した背景が語られました。2014年の車いすバスケットボールへの協賛を起点に日本パラスポーツ協会への支援へと広げ、2015年からはアスリートの雇用を本格化したと説明しました。現在、車椅子バスケットボール、パラ水泳、パラ陸上等、パラアスリート選手14名が所属し、全国の拠点で勤務をしながらスポーツで活躍しています。
大きな方針は3つ①選手が競技と業務とを両立できるようにすること ②地域で採用を行い、地域で応援・支援をすること ③引退後も勤務継続できるようセカンドキャリアを計画的に支援すること、とのことです。
選手は社会貢献も業務の一環となっており、全国各地での講演会・体験会などを年間150回規模で実施しています。また、パラスポーツ選手との協働を進める中でバリアフリーが進み、オフィスの出入口や動線の見直し、駐車スペースの確保、イベントでのサポート手順の学習など、具体的な対応や社員の意識が促進されてきたと話しました。
社内アンケートでは、パラスポーツへの理解や自社の取り組みへの誇りが高まっていることが確認でき、継続的な取り組みは東京都スポーツ推進企業の認定にも結び付いているとまとめ、これらはCSV(Creating Shared Value)の考え方を現場で具体化していくプロセスだと位置づけました。
長瀬産業株式会社 経営管理本部 コーポレートリレーション部 PR課 課統括 高橋 奈々子氏

長瀬産業の高橋氏からは、特別協賛する陸上大会「NAGASEカップ」への取り組みが紹介されました。「NAGASEカップ」は障がいの有無を超えて選手が同じトラックに立つインクルーシブ設計を特徴としています。第1回は参加約300人から始まり、直近の第4回は2日間で選手エントリー約1,600人・来場延べ約8,000人へと拡大したとのことです。参画を重ねる中で「企業風土の変革」「企業ブランディング」「社会貢献」といった意義や参画の在り方をよりクリアに進化させています。
来場者が競技を見るだけに留まらないよう、車いす・義足の体験や展示など「滞在の楽しさ」を増やす工夫を重ねていると述べました。また、社員ボランティアの参加を重視しており、約80人規模で運営に関わっていると話しました。ボランティアの社員は、例えばレース後に腕に障がいのある選手に水を渡す際にどう渡してよいか最初は戸惑っても、自らがそのような場面に出会うことで、判断し動けるようになっていく。こうした日常では出会いにくい気づきが様々な場面で生まれることで運営もより良くなり、ボランティアのリピーターも増えている実感があると述べました。
最終的には「このような活動をしているNAGASEって良い会社かも」と思ってもらえることを目指しており、まずは社員が家族に自社を語れる、お客様との間に新しい会話が生まれるといった変化を大切にしているとまとめました。
サミット株式会社 広報部マネジャー 尾崎 俊介氏

サミットの尾崎氏からは、セルフレジ等で店舗の効率化が進む中、その分の費用や時間をお客様とのコミュニケーションや体験価値に振り向けるという同社の基本姿勢が示されました。目指す姿は地域の中で、お客様も自分たちも楽しくスポーツを応援することであり、その思想に沿って多くの店舗を展開している世田谷エリアに根差すスフィーダ世田谷FC(なでしこリーグ)の支援を2017年から行っています。
支援はイベント単発で終わらせず日常に浸透させる方針で、地域のサッカー教室への選手参加や、試合のない日にも選手が店舗に立って来店客と会話する売場での接点づくりを重ね、地域と売場が自然につながる状態を創出していると述べました。さらに、年2回のスポンサーマッチでは新入社員全員が運営ボランティアとして現場に入る設計とし、会社・地域・クラブが同じ方向を向く体験を生み出しているとしました。
また、選手5名を社員として雇用しており、今春はチームキャプテンを広報に配属。公式SNSで新商品や店内コーディネートを選手自身の言葉で発信することで、社内外の巻き込みを強化し、ストーリーを伝えることを重視しているとのことです。尾崎氏は、地域密着で、顧客・従業員・取引先が同じ目線で盛り上がる場を日常の業務の延長で展開していくことがサミットらしい活動である旨をまとめました。
まとめ
質疑応答では、「KPIをどのように置き、定量評価・定性評価をどう考えるか」「スポーツへの取り組みを始める・やめる際の社内における意思決定プロセスは」「広報部門担当することの意味は何か」等多くの質問が寄せられ、登壇者と参加者の皆さんの対話が大いに盛り上がりました。最後に司会の永井氏が、「スポーツへの取り組みも多様化しており、社業に生かす視点や方法が沢山あると本日学ぶことができた」と締めくくりました。