ヘラルボニー×島田電機製作所:経営と一体化した広報

「第6回企業部会セミナー」2026年3月26日実施

2026年3月26日の「第6回企業部会セミナー」は、『経営と一体化した広報~ヘラルボニー×島田電機製作所 コミュニケーションの力で社会のイメージを変え、経営を前に進める2社の取り組みから学ぶ~』と題して、株式会社ヘラルボニー 広報室シニアマネージャー小野 静香 氏と株式会社島田電機製作所 経営企画部 企画チーム主任である小倉 心愛 氏を講師に迎え、開催されました。当日のセミナーの模様をレポートいたします。

講師略歴

株式会社ヘラルボニー
広報室シニアマネージャー 小野 静香 氏

新卒でサイバーエージェントに入社し、WEBメディアの編集・マーケティングを経て広報に転身。BtoB・BtoC双方の広報PRを経験し、2022年よりヘラルボニーに参画。広報室の責任者として、社内外のコミュニケーションを統括し、PR戦略の立案やチームマネジメントを手掛ける。2023年 ACC PR部門グランプリを受賞した「鳥肌が立つ、確定申告がある。」など、社会を前進させるためのソーシャルアクションの推進にも携わる。

株式会社島田電機製作所
経営企画部 企画チーム主任 小倉 心愛 氏

2021年に株式会社島田電機製作所へ新卒入社。企画担当としてブランディング活動に幅広く携わり、2024年には企画チームの立ち上げに伴い主任に就任。現在は、ブランディングを軸に、PR・採用・体験施設「OSEBA」や工場見学の運営、さらに社内の組織づくりにも力を注いでいる。プレイヤー気質を活かしつつ、最近はマネジメントスキルの習得にも奮闘中。

講演のポイント

島田電機製作所 小倉 心愛 氏

1933年に創業した老舗のモノづくり企業ですが、「事業活動はファンづくり」を基本理念に掲げています。PRコンセプトは「すごさより、らしさを」。中小企業として、「比較される存在ではなく、選ばれる唯一無二」を目指しています。ファンづくりのためにインターナルブランディングを重視していて、「らしさ輝く世界をつくる」のビジョンに基づき、社員それぞれのらしさ(良さ・持ち味)を引き出すための仕組み・仕掛けを30以上展開しています。社員が自分らしく輝き、自社のファンになっていく。そうした日々の積み重ねが、島田電機ならではのカルチャーの醸成につながっています。
アウターブランディングとしては、代表的な取り組みの一つに「工場のぞきみ見学会」があります。エンジニアなども含む3分の2の社員が工場をアテンドするアットフォームな見学会です。そのベースには当事者意識がブランドをつくるという考えがあり、「全員広報」として自分の言葉で語ることを大切にしています。また、企業姿勢を発信する拠点として「OSEBA」があります。「子どもはボタンを押したがる」という社会ニーズに応えるためにオープンした「押す」をテーマにした遊び空間です。子どもがボタンを押したくなる「イタズラ心」に着目し、イタズラに価値を付けた取り組みとなっています。
また、日本パブリックリレーションズ協会が主催する「PRアワードグランプリ2024」において、「無名だったBtoBのニッチな下請け町工場を、毎月2000人以上が殺到する人気企業に変えた“ファンづくり活動”」がゴールド賞を受賞しました。これは、PRを通じて目指した人中心の組織づくり、社員や顧客、さらには社会から選ばれ続ける企業となることを目的とした活動ですが、売上向上を直接のゴールとするのではなく、デザインやPRによって企業の枠を超えて社会的な影響を与えた点や「全員広報」を評価いただきました。 

ヘラルボニー 小野 静香 氏

ヘラルボニーは、重度の知的障害を伴う自閉症のある兄をもつ双子の代表が、兄に向けられた「可哀想」という言葉への違和感を原体験に創業しました。社名は兄の翔太さんが自由帳に記した謎の言葉。一見意味がないとされるものを「価値あるもの」として魅せたいとの思いが込められています。ビジネスモデルは「アートIP」を基軸に契約作家にロイヤリティを支払うことを発案。契約作家・福祉施設へのロイヤリティ総額は2021年度からの4年間で25.5倍にUPしました。
パブリックリレーションズでは、「障害」のイメージを変容し、新しい価値観となる文化を築くという企業ミッションに沿って、単なる認知向上ではなく、“社会における価値の前提そのものを書き換える”コミュニケーションに取り組んでいます。「障害」という言葉からは一般的には欠落や支援対象というイメージが想起されるものですが、支援ではなく「対等」に、むしろ「リスペクト」が生まれるような発信をコミュニケーションの力で変えようとしています。100年企業を目指すスタートアップとして、歴史に「点」を打つことが重要と考え、そのために広報の価値を発揮します。その一つは「“社会”の中で意義を語る。」です。例えば、「17,031円」という数字は就労支援B型事業所の月額平均工賃で、特に知的障害のある方が多く利用する現場の実態を示す数字ですが、ある契約作家の方の年収が数百万円となり親の扶養を超え確定申告したとの話が届きました。この事実は、障害は欠落というイメージを覆すのにインパクトがあると考え、1月31日の「異彩の日」に合わせて「鳥肌が立つ、確定申告がある」というコピーのポスターを作成。国税局につながる霞が関駅構内に掲出し、プレスリリースも発信。SNSを中心に話題になりました。
もう一つが「“歴史”の中で意義を語る。」です。重度の知的障害のある作家が、カンヌライオンズの舞台でライブパフォーマンスを披露し、スタンディングオベーションが起こりました。また、パリ・ファッションウィークでは、フロントロウに作家も座りました。これこそが「歴史」に点を打つことではないかと思います。

ディスカッション

ディスカッションパートでは、「広報の領域」などをテーマに語っていただきました。島田電機製作所 島田社長にも議論に加わっていただき、「広報は、友達に話す、親に話すという感覚だけで十分で、難しくとらえていません。工場見学も同様です。工場見学により“見られている”から“見てもらえている”に会社の風土が変わりましたので、モチベーションとしても大切です。仕組みより仕掛けが重要で、自然に誘導・誘発されていくことを大切にしています。」という貴重なお話を伺いました。小倉氏からも「全員広報ができるように入りやすい枠組みをつくっています。“機会”“場”を作り、成功体験をつくっていくことが大切」とお話いただきました。

 また、ヘラルボニー小野氏からは「認知をさらに高めていくフェーズにあるスタートアップ企業なので、広報の領域はあえて限定せずに、宣伝、ブランディング、販促まで横断的に担ってきました。また、代表がPRをとても重視していることから、パリ・ファッションウィークへの参加など代表発案を広報が実行するケースもあります。トップと常にシンクロし、経営や組織を前進させる役割だと考えています。」とお話いただきました。また、クリエイティブでどれだけ軽やかに、かっこいいものとして福祉を伝えていけるかを徹底していて、例えば、丸井グループと共創したヘラルボニーカードでは、アートが美術館に飾られているようなイメージにしたとのことです。

まとめ

今回のセミナーでは、経営と一体化した広報のあり方について、2社の方からレクチャーと対談形式で語っていただきました。両社共に、まさにコミュニケーションの力で社会のイメージを変えて、経営を前に進めるお取り組みをされていて、多くのことを学ばせていただきました。

文責・YKK株式会社 井深 緑 氏