開催レポート:2026年3月10日実施(関西)

関西委員会は3月10日、京都・南座で、松竹株式会社 演劇広報宣伝部興行宣伝室(南座)石田佳耶氏による講演会を開催しました。「伝統と革新が融合する歌舞伎にみるPR戦略」をテーマに、全国から約35人が参加。日本最古の歴史を誇る劇場がいかにして現代の観客を魅了しているのか、その舞台裏が明かされました。

伝統の「維持」ではなく「発信」を重視
江戸時代初期から400年以上の歴史を紡いできた南座。石田氏は講演の中で、南座が目指すのは単なる伝統の「維持」ではなく、多様な公演を通じた「次世代への文化発信」であると強調しました。
南座は、アイドルのコンサートやアニメとのコラボレーションなど、多角的なコンテンツを展開。伝統が持つ「信頼感」と最新エンタメの「熱量」を掛け合わせることが、同劇場のPR戦略の核となっています。
「まねき」を活用したクロスプロモーション
具体的な事例として紹介されたのが、冬の京都の風物詩「吉例顔見世興行」に先立つ「まねき上げ」です。出演俳優の名が書かれた看板を掲げるこの行事は、メディアを巻き込むことで興行への期待感を最大化させる、ニュース性の高い広報イベントとして機能しています。プロバスケットボールチーム「京都ハンナリーズ」との連携では、まねき文字(勘亭流)をサードユニフォームや応援にグッズに用いてデザイン。伝統芸能と現代スポーツという異なる層をクロスさせることで、双方のブランディングに成功した事例が報告されました。
若年層の集客で「奇跡的」な世代バランス
最近の大きな成果として、3月の「花形歌舞伎 特別公演 曽根崎心中物語」の事例が挙げられました。映画『国宝』のヒットによる歌舞伎の新規ファン層をターゲットに据え、アドトラックやSNS、アニメ動画など若年層向けのチャネルを戦略的に設計しました。
その結果、従来の50代〜90代中心の客層から一変。20代から60代がほぼ均等に分布するという、伝統芸能界隈では「奇跡的」とも言える世代バランスの取れた動員を実現し、戦略の正しさが証明されました。
アナログとデジタルの最適解
石田氏は、「俳優への細やかなホスピタリティから先端技術の導入に至るまで、アナログとデジタルの最適解を常にアップデートし続けている。」と言及。現場の熱量を最大化することこそが、文化施設を永続させる唯一無二の戦略であると締めくくりました。

講演会終了後は、石田氏のご案内による南座内のギャラリーツアーを実施。1階から3階の椅子席には快適な鑑賞環境を目的にエアウィーヴとのコラボによるクッションが設置されていることや、ロビーでの企業の商品サンプリング、自治体とのコラボレーションの事例なども紹介されました。
講演会とギャラリーツアーを通じ、参加者は南座の多角的な運営手法と、ファン層を拡大させるための緻密なPR戦略について理解を深めました。伝統を現代の文脈で再定義し、常にアップデートを続ける南座の取り組みは、文化発信のあり方を示す先進的な事例として、参加者から高い関心が寄せられました。
