ソートリーダーシップ

パブリックリレーションズ型のリーダーシップ

ソートリーダーシップ(Thought Leadership)とは、「特定の分野において革新的なアイデアや解決策を提示し、ステークホルダーとの共創により、市場の主導権を獲得していくリーダーシップのスタイル」を指す。

起源には諸説あるが、ハーバード・ビジネス・レビュー等の編集者を務めたジョエル・クルツマン(Joel Kurtzman)氏が、1994年に「特定の分野において誰もが一目置くような影響力と存在感のある人物」をソートリーダーとして提唱したことが由来と言われている。

「今」を捉える背景と意義

社会の多様化、技術の躍進、商品・サービスのコモディティ化等が連鎖的かつ劇的に進行する現代において、未来の不確実性は高まっている。市場で選ばれ続ける存在となるために頭を悩ませる経営やマーケティングの領域において、ステークホルダーとの対話を前提とする市場開拓が先進性を求める組織に取り入れられつつある。

該当する代表例としては、モバイルデバイス市場におけるアップル、Life Wear 市場におけるユニクロ、クラウド人事労務ソフト市場の SmartHR など、いずれも当時の潜在的市場を開拓した組織が挙げられる。

一方で、パーパス経営やビジョナリーカンパニーといった概念と社会的意義を根幹に置く上で共通点又は類似点を持つ概念でもあり、ソートリーダーシップがどの程度一般化するかは、これから誕生または成長する市場のソートリーダーたちにかかっているとも言える。

実践の考え方

ソートリーダーシップの意義は理解できたとしても、実践するハードルは模倣性が低いが故に高いと言える。

実践する上で重要なステップは、目指す社会の策定、狙うソート(≒市場)の選択、ステークホルダーとの対話、社会実装の4つと考えられる。すなわち、社会をどうポジティブに変えたいかを踏まえた市場のデザインを基に、自らをソートリーダーと認めてくれる仲間とともにアクションしていくことが求められる。

留意すべき点は、時間観とスタンスの大きく2点ある。

時間観においては、小規模でもよいので社会実装の第一歩を遅くとも1~2年内で推進していくことが望ましい。なぜならば、ポテンシャルの高い市場は先行者優位がより働きやすいからである。当然ではあるがリスクを覚悟で、速い意思決定が求められると言ってよい。

スタンスとしては、ソートリーダーシップとは自身から名乗るものではなく、結果的に社会から認められるものである。従って、実践においても一人称の主語のみに留まることなく、実現したい社会や狙うソート分野を主語に、牽引していく姿勢や取り組みを示すことを忘れてはならない。

執筆=清水拓磨
株式会社サニーサイドアップ
アカウントプランニング局 コミュニケーションプランニング部 副部長