これからの企業に求められる「脱炭素経営」と推進のためのPR
2020年10月、政府は「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言した。カーボンニュートラルとは、CO2をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理等による「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味し、2050年までの
カーボンニュートラルの達成には社会全体での取り組みが必要であり、企業活動における脱炭素経営は急務の課題となっている。
スコープ1・2・3(ワン・ツー・スリー)という言葉をよく耳にするようになったのではないだろうか。脱炭素経営を進めるうえで、企業が排出している炭素量をカウントするための方式用語である。企業活動における排出量の算定には「GHGプロトコル」が使われることが多く、この算定方式では排出源をもとに3つのカテゴリーに整理している。自社で使った化石燃料からの排出をスコープ1、電力消費からの排出をスコープ2、そのほか製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程において排出される温室効果ガスの量、いわゆるサプライチェーンからの排出をスコープ3としている。スコープ3の範囲は多岐にわたるため15のカテゴリに分けられている。スコープ3は、サプライチェーンの「上流」と「下流」に分類されており、 原材料の調達や輸送・配送などが「上流」、製品の使用や廃棄が「下流」と分けられている。

(グリーン・バリューチェーンプラットフォームWEBサイトより引用)
スコープ3の算定には現在なお、さまざまな課題があるが、その算定と改善への姿勢は「企業が本気で脱炭素を実現して、未来への持続可能な社会づくりと企業成長に取り組もうとしている」ということを示すことになる。今後、企業活動におけるスコープ3の情報開示は国際基準となる。企
業は社会の一員であり、その活動を公にすることがPRである以上、現在企業行動全体の統合の結果として求められている炭素排出量削減、カーボンニュートラルへの正しい理解はPRパーソンの必須要件であり、広告PR活動における脱炭素経営への貢献は、より強く求められてくるのではないだろうか。
執筆=野口真理子(株式会社博報堂 テーマビジネスデザイン局)