リテールメディア

購買データ活用で可能性がさらに広がる小売業の広告媒体

リテールメディアとはリテール(小売)企業が自社で保有する消費者の購買データやメディアを活用して広告を配信する仕組みであり、同時にリテール企業が広告メニューを提供・販売する、新たなビジネスモデルでもある。

これらは大きく分けて、店舗を持つリテール企業と、EC専業の小売企業(EC事業者/Amazon、楽天など)が提供するサービスに分かれており、現状の日本では後者が広告市場規模としては9割以上を占める。

日本におけるリテールメディアの特徴

リテールメディアの成功例として、米ウォルマート(Walmart)が取り上げられることが多いが、人口の8割が利用するほどのシェア、同時にEC利用率も高いという成功条件は日本には存在せず、そのままの方法を輸入するだけでは、なかなか成功が難しい。

日本ではドラッグストアがリテールメディアを早くから導入しており、コンビニエンスストア・家電量販・GMSにも広がっている。自社保有の顧客データを活用してオウンドアプリ、公式SNS、店舗サイネージなどへ広告を配信する点はウォルマートと同じだが、主にECへの誘引ではなく「実店舗」へ誘引する、いわゆるオフライン誘導型がメニューの中心になっていることが日本のリテールメディアの特徴となっている。

今後のリテールメディアの方向性

日本のリテールメディアは提供するリテール企業はもちろんのこと、利用する側のメーカーも増えてきており、広告費をマスメディアから投資対効果が見えるリテールメディアに配分を増やす流れも出てきている。これまではメーカー側の営業とリテール側の商品部が中心となる「棚取り」の延長線から、宣伝部やマーケティング部門が関わる「メディア」への進化過程にあり、最近は広告会社や印刷会社、商社なども仕組み作り、運用などに参入してきている。

今後、リテールメディアが拡大するのは間違いないが、投資対効果=成果を出すためには、「コンテンツ」がより重要になってくるであろう。配信・分析結果を消費者の行動変容に繋げていくためのコンテンツ制作・運用体制が今後のリテールメディア成功のカギになり、生成AI活用などによって、より高頻度・高精度なコンテンツ供給が実現していくことが期待される。

執筆=苫米地信治(TOPPAN株式会社 BXセンター)