事業主体:金龍製麺株式会社
エントリー会社:株式会社博報堂/株式会社オズマピーアール
人気スポット消失の危機を、ユーモアを大切にする大阪ならではの「笑いによる合意形成」という
クリエイティビティで、さまざまな変化を巻き起こしたプロジェクト
【課題】道頓堀のランドマークになっている龍の立体看板の“しっぽ”が、撤去を命じられた
大阪を代表する歓楽街「道頓堀」、軒を連ねる店々の“立体看板”は、この場所独特の文化であり、観光資源にもなっている。その中でも有数の知名度を誇る老舗ラーメン店「金龍ラーメン」の龍の立体看板の“しっぽ”が、隣地にはみ出していると訴えられ、撤去命令が下った。ニュースを見た生活者からは、金龍ラーメンへの批判が多く寄せられていた。この状況を放置すると(単にしっぽを撤去するだけだと)金龍ラーメンの悪い評判が定着してしまう懸念があった。クライシスとも言えるこのネガティブな状況をどう打開するか?

【戦略】大阪らしい笑いを込めたアクションで裁判の勝ち負けという枠を超えたユーモラスな話題に逆転させる
判決に則りしっぽは撤去しつつも、スポットを完全に無くすのではなく、立体看板に命を吹き込むことで新しいスポットに変化させて、しっぽ撤去前以上の話題性と価値を創りあげることで、金龍ラーメンのブランドをまもり、さらに発展させることを目指した。そして、共になんば・道頓堀のカルチャーを形成している近隣の店舗を巻き込みながら、金龍ラーメンのしっぽにまつわるユーモラスなストーリーが展開されることで、ひとつのラーメンブランドのキャンペーンに留まらない、日本・全国を巻き込むような“なんば・道頓堀”が盛り上がるプロ
ジェクトにすること。そのために、切ったしっぽや店舗を、他のブランドに活用してもらえる(コラボレーションができる)ようなメディアとしての機能を持たせることを目指した。
【アイデア】立体看板に命を吹き込み、道頓堀を巻き込む地域の共有ストーリーを創る
1. 道頓堀のカニ料理店とのコラボレーション
私有地にはみ出し撤去命令が下っている“龍のしっぽ”を、断面まで作り込んだ“しっぽ痕”に差し替えた。さらに、切ったしっぽを向かい側のカニ料理店の立体看板の“ハサミ”部分に設置し、「龍のしっぽを切ったのは、ご近所のカニだった!」という物語を創出した。「(裁判による係争という)人間のロジックが全く通じないカニがしっぽを切った」という物語を、地域とのコラボレーションでつくりあげることで、法律的なクライシスを収束させるだけでなく、一気にポジティブな話題に変化させて日本全国でニュースに。ブランドの好意度を大きく上昇させる物語に変化させた。カニとのコラボレーションの実現で、龍の立体看板の表情は「うれし涙」に変化した。
2. なんばの老舗包丁ブランドとのコラボレーション「包丁広告」
しっぽ切除により注目を集めたお店自体を、地域を盛りあげるためにさらに有効活用するアクションにも取り組んだ。しっぽの「切断」というイメージを活かして、包丁の「切れ味」との連想を狙った広告を、なんばの老舗包丁ブランド「堺一文字光秀」とのコラボレーションで店舗壁面に掲出。しっぽ痕付近の縦長の広告スペースの形状を活かした「電柱広告風」のデザイン・コピーで地域のエリア回遊を促す内容にした。
3. オーストラリアのラム肉(子羊肉)生産者団体とのコラボレーション「金羊(きんひつじ)ラーメン」
大阪・関西万博「オーストラリアパビリオン」のオフィシャルパートナーの「ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア(MLA)」とのコラボレーションも実現した。MLAから提供をうけたラム肉のトッピングサービスを1週間限定で行い、計1400食を提供。さらに、万博のオーストラリア・ナショナルデー開催日に合わせて龍の頭に羊の角をモチーフにした造作を設置した「ひつじバージョン」に変身させることで、万博を通じて、日本のラーメンと、同国の重要な産業でもある羊(ラム)という2つの食文化の融合を象徴するメッセージを発信した。
【結果】金龍ラーメンブランド、さらには立体看板全体のエンタメ性/注目度をより高め街への訪問動機につながる観光資源にもなった
施策認知度=関西56%/全国37%
ブランドイメージ=ブランド認知度3.9%UP/ブランド好意度5.6倍UP
メディアリーチ=TV65番組153分超/1135ネットメディア/20新聞メディアでの露出を獲得
SNS(X)関連投稿16800件超
金龍ラーメン周辺に行ってみたいと答えた生活者(日本全国)=38%
審査委員 評価ポイント
訴訟による「対立と分断」という難しい状況を、大阪らしいユーモアと「物語の共有」で見事に融和させました。単なる面白さではなく、訴訟相手への配慮や炎上リスクを回避しつつ、「負けて勝つ」という経営の「覚悟」を伴った戦略を評価。アイデアの力で地域の合意形成を導いた、PRクリエイティブの優れた事例です。
受賞者コメント
ある日、『道頓堀の龍の看板の“しっぽ”に、撤去命令が下った』というニュースを目にした。SNSでは擁護派/批判派に二分され、「さみしい」「迷惑かけるな!」など負の感情ばかり。ユーモアと笑いの街なのに、このまま撤去だけして残念な出来事になるのはもったいない。笑いで全てまくり、地域を巻き込んだ明るい物語にしよう!と自主プレし実現した。しっぽをちょん切ってる時、こんな光栄な受賞に繋がるとは思っていませんでした。
博報堂 宮原広志
オズマピーアール 久保田敦