業界の垣根を超えた難病支援プロジェクト「I know IBD」

事業主体:アッヴィ合同会社
エントリー会社:株式会社プラップジャパン

「I know IBD」は、街の店舗がトイレを貸し出すことでIBD患者さんを支える仕組み。全国で3,000店舗以上が参画し、トイレ不安を抱える患者さんが安心して外出できる環境づくりに取り組む。疾患啓発の枠を超え、困りごとに寄り添い行動する思いやりの輪を社会に広げている。

誰もが経験したことのある“外出中のトイレ不安”

炎症性腸疾患(IBD)(主に指定難病である潰瘍性大腸炎・クローン病)は、大腸や小腸に炎症が起こり、下痢や腹痛を繰り返す疾患で、10~20代の若年層の間で多く発症する1,2,3,4。国内の推計患者数は約29万人4と指定難病の中でも多く※,5、年々増加傾向にある1,2。そんな患者さんの日常生活における大きな不安が、外出中に突然トイレが必要になること6。常にトイレの場所を意識し、不安から外出を控える患者さんも少なくない。こうしたトイレへの不安は、病気の有無に関わらず誰もが一度は経験したことのある身近な不安でもある。そこでアッヴィはこの問題を社会が共感し得る課題と考え、患者さんが安心して外出できる環境づくりに着手。多様なステークホルダー(=街の店舗や施設)を新たなパートナーとして位置づけ、美容室やホテル、飲食店や銀行など、一般的に「利用客でない限りトイレを借りづらい」とされる業態にも支援いただくことを目指した。

共感を可視化する、小さなサインの力

中心に据えたアイデアは、協力店舗の店先に掲出する「I know IBD ご遠慮なくどうぞ。」のステッカー。この一枚が“トイレを貸します”という意志表示だけでなく、患者さんへの支援の気持ちを可視化している。患者さんにとっては「安心して外出できる街のサイン」となり、店舗にとっては「地域の誰かを思いやる姿勢」を発信する手段となる。医学的な専門知識や大規模な設備を必要とせず、共感や協力を形にして共有することで支援の輪を広げられる――そのシンプルさが、本プロジェクトの特徴である。

2022年にプロジェクトを発足し交渉をスタート

SDGsや地域社会への貢献に注力している企業にアポイントを取り、患者さんの声や実例を共有しながら、企業・店舗が本プロジェクトに参加する意義を伝達。「特別な設備やスキルがなくても、トイレと思いやりの気持ちがあれば支援できる」というシンプルかつ、誰もが関われる仕組みを目指した。また賛同企業の従業員を対象に、疾患概要や患者さんへの対応などの心得をまとめた「パートナーガイド」を制作し、WEBにも公開。

I know IBDマップ

さらに患者さんが外出先で協力店舗を検索できる「トイレMAP」を作成し、支援の広がりを見える化。患者さんにとっての安心と、協力企業にとっての参加実感の双方を高めた。

支援の輪は3,000店舗以上に拡大

協力店舗は全国47都道府県に広がり、これまでに199社3,189店舗に拡大(2025年12月末時点)。協力企業によるプレスリリースやSNS投稿のほか、プロジェクトに共鳴した学生が「IBD広め隊」を自主的に結成し、地域での声かけを通じて協力店を開拓するなど、支援の輪が広がりつつある。プロジェクト事務局には、患者さんから「複数の協力店でトイレを借りたが、どの店舗でも対応が徹底していた」「外出先の幅が広がりありがたい」という声が寄せられ、協力企業からは「ホテルに宿泊された患者さんから喜びの声を頂戴した。社会に貢献し必要とされる企業を目指す当社としても、IBD患者さんの不安解消の一助となり、大変嬉しく思う」といった声が届き、参加による誇りを感じていただいている。

1.難病情報センター潰瘍性大腸炎(指定難病97) https://www.nanbyou.or.jp/entry/62(2025年4月1日閲覧
2.難病情報センタークローン病(指定難病96)https://www.nanbyou.or.jp/entry/81(2025年4月1日閲覧
3.Rubin DT, et al. :Inflamm Bowel Dis. 27,1942-1953(2021)
4.「潰瘍性大腸炎およびクローン病の有病者数推計に関する全国疫学調査」厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究 総括研究報告書(平成28年度)
5.「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数,年齢階級・対象疾患別」令和4年度衛生行政報告例(令和4年度末現在)
6.「IBD白書2020」株式会社QLife IBDプラス編集部
※IBDという指定難病はありませんが、潰瘍性大腸炎とクローン病をIBDという一つの疾患と定義した場合の患者数の試算です

審査委員 評価ポイント

同社は、患者さんの日常の課題を真摯に受け止め、製品収益外でも地道な活動を積み上げてきた。今や3,000 店舗以上からの共感・協力を得ており、企業の責任や覚悟を感じた。表向きはシールに集約しているが、特定の患者さんだけでなく、関係者全員に多様性理解や思いやりの醸成を促せるなどPRの重要なポイントが詰まった素晴らしい取り組みである。

受賞者コメント

「ステッカーを見かけただけで安心感を覚え、社会に受け入れられていると感じた」。これは、ある患者さんの言葉です。見た目では分からない難病に寄り添ってくださる企業・店舗の皆様の存在が、外出を諦めていた患者さんに勇気を与えています。ご支援いただいている全ての方々に深く感謝申し上げます。この賞を糧に、病気の有無に関わらず誰もが互いを思いやり、みんなが「I know IBD」と言える日を目指して活動を広げてまいります。

アッヴィ合同会社 I know IBDプロジェクト事務局