エントリー会社:岐阜県飛騨市
事業主体:岐阜県飛騨市
人口減少先進地の飛騨市が、担い手不足や地域課題を「交流の資源」と捉え直し、市民の困りごととファンを繋ぐプラットフォーム「ヒダスケ!」を展開。PRの視点からも強化し、観光客以上移住者未満の「関係人口」を年間1,500人確保。地域外の人の力をまちの支えに変える新しい公共モデルとして、国内外から注目されています。

全国の自治体が抱える「担い手不足」に挑む!「関係人口」創出プロジェクトの全貌
岐阜県飛騨市は、高齢化率40.59%に達し、日本の30年後の未来を先取りする「人口減少先進地」である。2005年からの20年間で人口の約3割にあたる9千人が減少し、現在は約2.1万人。この急激な変化は、祭屋台の曳き手不足や伝統的な農業の停滞、地域活動の担い手不足を招き、住民の間には「この町の将来は大丈夫なのか」「人がいないから諦めるしかない」といった不安と諦めの空気が感じられた。

こうした中、市は従来の「移住政策」だけに頼る手法の限界をいち早く察知した。移住という少ないパイを全国で奪い合うのではなく、観光客以上・移住者未満で地域に関わる「関係人口」を増やすことで、まちに前向きなエネルギーを取り戻す挑戦を開始した。
「飛騨市ファンクラブ」設立による関係人口の可視化と基盤構築
2017年、市は自治体直営の「飛騨市ファンクラブ」を設立した。ふるさと納税や観光をきっかけに飛騨市に心を寄せてくれる人を「会員」として可視化し、継続的なコミュニケーションを図る土台を築いた。市内事業者と連携した泥臭いファンづくりを行い、ふるさと納税の返礼品にチラシを同梱し、市内の宿泊施設でも入会を案内するなど、官民一丸となって「飛騨市のファン」を増やしてきた。

また、SNSを駆使して日常の暮らしぶりを丁寧に発信し、年賀状を郵送するなど、デジタルとアナログの両面で交流を継続。ファンの集いやバスツアー、部活動などの対面での交流も重視した。その結果、会員数は1.7万人を超え、実人口に迫る規模へと成長し、単なる「登録者」ではない熱量の高い飛騨市ファンとのつながりが構築できた。
地域課題を交流資源に変えるプラットフォーム「ヒダスケ!」の創出

ファンクラブが成長するにつれ、「何か手伝いたい」というファンの声と、「暮らしを体験してほしい」という市民のニーズがみえてきた。これを受け、2020年に支え合いを創出するプラットフォーム「ヒダスケ!」を設立。
これは、市民が抱える「祭の担い手がいない」「草刈りができない」「収穫等の作業に人手が足りない」といった困りごとを「プログラム」として発信し、ファンが助けに来る仕組みである。市職員や地域おこし協力隊が自ら現場を歩き、市民の潜在的なニーズを丁寧に掘り起こす「コーディネート力」が成功の鍵となった。地域課題を「マイナスの要素」ではなく、ファンとの「交流の資源」へと180度転換させたこのアイデアは、行政サービスの新しい形を提示している。
戦略的な広報PRと第三者評価によるシビックプライドの醸成
「ヒダスケ!」を単なるボランティア活動に終わらせないため、市は戦略的な広報PRを展開した。グッドデザイン賞をはじめとする6つの賞を獲得。この第三者評価を武器にメディアへのアプローチを強化し、NHK全国ニュースを含む延べ100件以上の露出を獲得した。
メディアが飛騨市の取り組みの価値を客観的に報じることで、住民は飛騨市で行われている活動の価値を再認識した。「外の人が助けに来てくれるなら、まだ続けられる」という前向きな変化が生まれ、広報PRが市民の「諦め」を「誇り」へと変えている。
定量的成果と「新しい公共モデル」としての全国への波及

プロジェクトの成果は、徐々にだが、確実に飛騨市にインパクトを与えている。これまでに開催されたプログラムは650件を超え、延べ5,200人、年間では1,500人が参加。具体例として、宮川町種蔵地区では、1,000㎡のみょうが畑が復活し、農家が「ヒダスケ!で集落にきてくださる方のおかげで元気でいられる」と語るほどの活力を生んでいる。
また、この取組みは「地方創生の優良事例」として全国から注目を集め、年間50件を超える他自治体からの視察が相次いでいる。2025年夏には21団体が参加するサミットを主催し、モデルの全国展開も始まっている。
審査委員 評価ポイント
地域の悩みを解決するため、市内外の人がつながる。地元市民・市役所職員・市外の人が連携するプラットフォームを構築し、メディアに積極的に露出し、知見を国内外で共有し、関係の輪を広げ育んできた、まさに広報の「関係づくり」の力を体現した取り組みである。
受賞者コメント
自治体広報の役割は単なるお知らせではありません。「人がいないからできない諦める」のではなく、広報の力で「市外の人と一緒に楽しもう」という前向きな力に変え、まちの空気を動かした点を評価いただき大変光栄です。この受賞は、一緒に歩んでくれている市民の皆さんと、全国のファンの皆さんの絆の成果です。これからも飛騨市らしさを大切に温かい助け合いの輪を全国へ広げていきます。
岐阜県飛騨市 総合政策課 広報プロモーション係