PR活動ガイドラインについて
2019年6月20日
公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会
1. PR活動ガイドライン策定にあたって
(1) 当ガイドラインは、(公社)日本パブリックリレーションズ協会(以下、協会)が2016年に制定した倫理綱領をもとにパブリックリレーションズのプロフェッショナルの標準となる行動基準を示しています。当ガイドラインを活用する際には、必ず倫理綱領を確認し、理解したうえで行うようにお願いします。また、協会会員においては倫理綱領の遵守を誓約していることを改めてご確認ください。
(2) 協会会員各社が活動ガイドラインを独自に作成する場合は、当ガイドラインで規定されている内容を参照の上、作成するようにお願いします。
(3) 広告関連協会など隣接する組織・団体が策定する倫理ガイドライン、活動ガイドライン等との整合性を保つため、運用面において必要な場合は各業界団体との協議・連携を行います。
(4) 法改正、グローバルにおける取引慣行の変化、デジタルにおける新技術の普及など、将来的に本ガイドラインの内容と既存の業務・活動との間に大きな差異が生じる場合には、協会内において必要に応じてワーキンググループを立ち上げ、活動ガイドラインの項目追加等を行い、修正していきます。
2. 当ガイドラインで示されている活動範囲
(1) 当ガイドラインでは、広範にわたるパブリックリレーションズの活動範囲の中から、メディアリレーションズの領域でのガイドラインを示しています。コンサルティング領域、イベント領域などに関しては、今後策定の検討を行います。
(2) メディアリレーションズの領域としては、従来のマスメディア・リレーションズならびに、PESOメディアそれぞれにおけるコンテンツ制作とリレーション活動におけるガイドラインを示しています。
PR活動ガイドライン
2019年6月13日制定
1. パブリックリレーションズ(PR)におけるプロフェッショナルの定義
(1) PRパーソンは、ステークホルダーと社会との間で健全な価値観を形成し、継続的に信頼関係を築くことが求められる。そのため、PRパーソンはステークホルダー間の相互理解と合意形成、信頼関係を深めるためのコミュニケーションのプロフェッショナルとして、所属する組織及び社会から期待される存在となるように努めなければならない。
(2) PRパーソンは自身の活動を通して、創造的な社会の発展と新しい社会的価値の創出に寄与することへの自覚と矜持をもち、地球環境の保全と持続可能な社会づくりに貢献する。
(3) PRパーソンは、法令遵守に努め、第三者の著作権及び商標権等の知的財産権、並びに名誉、プライバシー、肖像権及びパブリシティ権等の権利を十分に尊重する。また、個人情報保護法を確実に遵守する。
(4) PRパーソンは、反社会的な勢力との関わりを排除し、かつ反社会的なコンテンツを排除する。
反社会的なコンテンツ例
① 反社会勢力による活動、催し、コンテンツ制作
② 犯罪を肯定したり、美化したりするもの
③ 性に関する表現が露骨なもの
④ 差別表現にあたるもの
⑤ 生活者に対して虚偽の情報を流布するもの
2. 当ガイドラインで示される広報・PRパーソンとしての活動範囲
PESO(Paid, Earned, Shared, Owned)*メディアを通した活動による合意形成と信頼関係を深めるコミュニケーションの実践。
* PESO 統合メディアコミュニケーションのフレームワーク。
P は Paid media で「買う」メディア(広告やイベントのスポンサーシップなど)。
E は Earned media で「獲得する」メディア(ニュースメディアにおけるパブリシティなど)。
S は Shared media で「共有される」メディア(ソーシャルメディアやブログなど)。
O は Owned media で「所有する」メディア(コーポレートサイト、ブランドのソーシャルメディアアカウント、広報誌、店舗やミュージアム施設など)。
(PRSJ発行 PR手帳 PR用語ミニ辞典より)
(1) メディアリレーションズを通した合意形成と信頼関係を深めるコミュニケーションの実践。(情報掲載によるアーンドメディアの領域)
(2) 広告をパブリックリレーションズ活動の一手法として取り入れるコミュニケーションの実践。(ペイドメディアの領域)
(3) 情報発信の主体として合意形成と信頼関係を深めるコミュニケーションの実践。(オウンドメディアの領域)
(4) シェアドメディアの一メンバーとして発信・交流等を通じて合意形成と信頼関係を深めるコミュニケーションの実践。(シェアドメディアの領域)
3. 各活動範囲におけるガイドライン
(1) メディアリレーションズを通した合意形成と信頼関係を深めるコミュニケーションの実践。(アーンドメディアの領域)
① 倫理綱領におけるポイント
(i) 言論と報道の自由を尊重
(ii) 公正、誠実
(iii) 事実を正確に、適宜・適切に開示
② コンテンツ制作におけるガイドライン
(i) メディアリレーションズにあたって制作するコンテンツについては、事実の正確な開示を心がけ、報道機関及び報道に接する生活者の誤解を招くような表現を行わない。
(ii) 客観的データ等裏付けとなる資料添付の励行。
(iii) コンテンツの制作者、発信の責任者を明確にする。
(iv) 事実に基づきながら、報道、情報価値の高いコンテンツを提案・作成することで、新たな価値創造に関与するように心がける。
③ リレーション活動におけるガイドライン
(i) メディアリレーションズの実践にあたっては、事実を歪曲することなく報道機関に適正な情報提供を行うように心がけ、言論と報道の自由を尊重する。
(ii) 報道機関との公正、誠実な関係性を築き、生活者にとって価値の高い情報創出・提供を心がける。
(iii) 報道機関が、生活者に向けて公正かつ情報価値の高い報道を行えるよう、社会通念に留意しながら、情報提供、取材協力を実施する。なお、時代や環境変化にともなう社会通念の変化や新たな社会的コンセンサスについて協会全体で随時情報共有し、必要に応じて対応措置を検討する。
(2) 広告をパブリックリレーションズ活動の一手法として取り入れるコミュニケーションの実践。(ペイドメディアの領域)
① 倫理綱領におけるポイント
(i) 事実を正確に、適宜・適切に開示
② コンテンツ制作におけるガイドライン
(i) あらゆるメディアにおいて、広告スペースを報道記事的なコンテンツで表現する場合には、広告コンテンツであることを明示し、受け手に誤解を与えないようする。
1. 印刷媒体(新聞・雑誌)の場合
新聞・雑誌媒体の場合は、媒体社との相談の上、当該紙面上に「広告のページ」、「○○社提供」など広告であることを示す記載を表示する。記事広告の紙面において「PR(パブリックリレーションズ)」に対する誤解を生じる可能性がある「PR」という表記は推奨しない。
2. 放送媒体(テレビ・ラジオ)の場合
媒体社との相談の上、テロップやコメントなどにより、広告によるコンテンツであることを明示する。
3. デジタルメディア(インターネット上でニュース等の情報発信を行う報道機関)の場合
デジタルメディアにおいてネイティブ広告を実施する場合は新聞・雑誌と同様に広告である旨明示し、その際には「PR」表記は推奨しない。
4. デジタルメディアやデジタル端末等にて新たな広告手法・機能が生じた場合も広告である旨明示する。
5. 新たな広告手法への対応については、JIAA(日本インタラクティブ広告協会)の「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン」も十分に参照し、より適正な対応基準を定めることとする。
6. その他の留意点
広告コンテンツの内容が、広告関連の法令に抵触していないか、十分に配慮する。
広告関連の法令(例)
(ア) 景表法
キャンペーンや懸賞等の景品類の提供関連規制や、優良誤認、有利誤認等の不当表示規制等
(イ) 特定商取引法
法定の表示事項の表示等
(ウ) 薬機法
非医薬品についての医薬品的な効能効果の表示、医療用医薬品の広告等
7. また所轄官庁及び各業界団体等が定めるガイドラインに依拠する。
(3) 情報発信の主体として合意形成と信頼関係を深めるコミュニケーションの実践。(オウンドメディアの領域)
① 倫理綱領におけるポイント
(i) 公正、誠実
(ii) 第三者視点による客観的事実を正確に、適宜・適切に開示
② コンテンツ制作におけるガイドライン
(i) 社会にとって重要な情報の発信主体(またはそのエージェント)として、報道機関と同様の矜持と責任を持って情報発信を行い、新たな価値観の創造に貢献する。
(ii) 発信する情報の主体が誰であるかを明確にし、できうる限り第三者視点に立った客観的事実を明確にしたうえで情報発信を行う。
1. 情報の責任者の明示
2. 引用情報の明示
3. 問い合わせ窓口の設置など
(4) シェアドメディアの一メンバーとして発信・交流等を通じて合意形成と信頼関係を深めるコミュニケーションの実践。(シェアドメディアの領域)
① 倫理綱領におけるポイント
(i) 公正、誠実
(ii) 第三者視点による客観的事実を正確に、適宜・適切に開示
② コンテンツ制作及びリレーション活動におけるガイドライン
(i) デジタルメディア上で「情報受信者」(情報を受信する生活者)が「正しく情報を知る権利」を尊重し、保護する。
(ii) デジタルメディア上のブログ、SNSにおける情報発信者に何らかの金銭・物品・サービスなどの提供を行う場合、その提供の主体(事業者など)と情報発信者に関係性があることを明示する。
例)有力インフルエンサーに対して、商品提供を行って当該商品情報のインプレッションなどの情報発信を依頼する場合には、提供者(商品の責任者)から提供を受けた旨、情報内で明記する。あるいは、「便益タグ」(#プロモーション、#スポンサードなど)を付記して情報発信する。
(iii) デジタルメディア上で新たな技術・サービスが登場してきた場合も関係性明示の原則を適用する。また、WOMJ(WOMマーケティング協議会)の「WOMJ」ガイドラインも十分に参照し、より適正な対応基準を定めることとする。