関西委員会 第302回定例研究会 2026年9月9日実施

株式会社タンシキ代表取締役兼経営・広報研究所長の秋山和久氏を講師に迎え、「広報の仕事を《因数分解》してみよう」と題した関西委員会・定例研究会を大阪市内で開催しました。広報実務等に関わる約30名が参加し、講演、対談、グループワークなどを通じて、広報を支えるものを可視化することで見えてくるものについて学び合いました。
広報の仕事を内外に説明する難しさ

秋山氏は〈広報活動の対象である記者職〉、〈PR会社の職員として外部の広報業務支援〉、〈大学という組織の広報担当としての実務〉と異なる3つの立場で広報に関わってきた異色の経歴の持ち主で、広報の仕事を経営層や他部署に説明することの難しさを感じてきたと言います。
広報活動はさまざまな要因が常に絡み合うため、成果だけを切り分けて示すことが容易ではありません。秋山氏は、広報活動は担当者のキャリアや判断に依存しやすく、業務の進め方を言語化したり、他のスタッフが再現できる形にすることが難しい点も起因していることを指摘しました。こうした問題意識から検討した数式概念モデルについて、秋山氏からその考え方を紐解いていただきました。
広報成果は目に見える「成果物」だけだろうか
メディアに掲載された記事や発信した情報など、広報の仕事では目に見える成果物に注目が集まりがちです。しかし、それまでには情報探索、状況分析、伝達方法の検討、関係者との調整など、さまざまな知恵や行動が積み重なっています。成果物の評価だけでなく、そこに至るプロセスにも目を向けることの重要性を秋山氏は説きました。

〈広報活動を構成する要素〉を整理できれば、結果が良かった時には何が奏功したのか、思うような結果が得られなかった時にはどこに課題があったのかを振り返りやすくなります。
秋山氏が編み出した数式概念モデルは広報の効果を数値化するための手法ではなく、広報成果を生み出すしくみ、広報活動を構成している要素を分解し、数式に当てて整理して実務の改善や社内の認識合わせに役立てることを企図しています。
語られていないさまざまなアクション
講演で示された因数分解の考え方を自分事として接続する導入プログラムとして、秋山氏とPRSJ関西委員会・北川治彦理事との対談セッションの時間が設けられました。
広報の成果について、秋山氏は「発信した情報を受信した人の態度変容」を挙げました。北川氏はこれに呼応し、「広報のアクションによって何らかの作用が生まれることを我々はめざしている」と表現しました。「aをすればbになるということには必ずしもならず、広報の仕事には流動性がある」と言う秋山氏に対し、「それを前提に置けば、一旦結果と分けてプロセスを辿る必要がある」と北川氏が整理しました。その手掛かりとして、秋山氏は「例えば思った通りの成果に至らない場合でも情報が熱を纏(まと)って伝わっている場合があり、そのように受け止めた相手の反応は効果の一つといえる」と語りました。北川氏は「情報や記事はサーモグラフィーで測れないので、相手の反応や広報的な意味合いといったものをしっかりフィードバックしていく必要がある」と解釈を繋ぎました。秋山氏は「広報は都度さまざまな場面で多くのことを考え、判断し、多くの作業を行っている一方、フローの仕事、つまり流れていく性質があるため、積み上げ感に欠けている」点を指摘しました。北川氏は「広報担当が行っているさまざまな工夫や数々の工面といったものを見える化していくことも大切だ」と応えました。
大切にしている活動要素を共有
このあと、参加者は5グループに分かれ、自分たちの仕事を構成する要素について意見交換するワークショップを行いました。属する企業の規模、広報の体制、自身の立場に違いはあるものの、広報プロセスを紐解く中でどういった要素があり、どのようなことを大切にしているかという共通理解がなされた様子が窺えました。

各グループからは「記者さん目線への寄り添い」や「事業に取り組む社員の熱量」はじめ、「記者さんへの対応と並行して競合の動静をウォッチしていくこと」の重要性、「積極的に打って出たい広報戦略の意図を理解、同意してもらえるよう社内の壁を突破していく情熱」の必要性など、机上のHOW TO論ではなく、自身のエピソードを起点にした臨場感ある発表がなされました。

これを受け、「それぞれが伝えたい広報業務に伴う現場の努力自慢」があることを感じ取った秋山氏は、もっともっと自分たちの仕事の裏側を語っていくことの大切さに触れるとともに、仕事の改善や可視化、分析に時間をかけないために「仕事の因数分解」を役立ててほしいと締めくくり、組織として広報の力を高めていくための新たな視点が示された研究会となりました。
報告 馬場大輔(関西委員会幹事/TMオフィス)
文責 北川治彦(関西委員会副委員長/TOYO TIRE)