事業主体:株式会社ファミリーマート
エントリー会社:The Breakthrough Company GO
消費期限が迫る食品に、涙目のおむすびが「たすけてください」と訴えかける値下げシールを貼ることで、食品ロス削減を推進。感情に訴えるメッセージで、消費者の「貢献したい」という前向きな購買行動を喚起。値引き商品の購入率が上がり、食品ロスの削減に貢献。

便利さの裏にある「廃棄」の宿命
コンビニは「いつでも揃う」ことが価値である一方、欠品を避けようとするほど廃棄が生まれてしまう、”コンビニエンス”であることの宿命がある。公正取引委員会は、コンビニ1店舗あたり年間468万円分の食品が捨てられていると指摘する。ファミリーマートは「ファミマecoビジョン2050」において食品ロス削減を重要テーマとして掲げ、発注精度向上や容器包装改良などを継続してきたが、企業の努力だけでは解決しきれない構造的な問題である。
日本人の多くが持つ「もったいない」という感覚
日本人の約9割が「食品ロスを改善したい」と考えており、それを裏付けるように、新規事業開発のワークショップ等でも食品ロスをテーマにしたアイデアが多く出てくることを企画者が体験。また、スウェーデンでは「Rscued(レスキュード)」という廃棄予定のフルーツだけでつくったジュースブランドが成功するなど、食品ロスの削減が購買行動につながっていることに着目。
そうした中で、ファミリーマートが実施していた「エコ割」は、値下げによる購買促進にしかなっておらず、上記のような「食品ロスを減らしたい」という生活者の気持ちを行動に結びつける余地はなかった。
感情に訴える「涙目シール」

そこで考案したのが、涙目のおむすびが「たすけてください」と訴えるイラストを加えた「涙目シール」。購買直前の接点に、感情を喚起するメッセージを重ねるアプローチである。このデザインとメッセージは、消費者インタビューでどのイラストやメッセージが受け入れられるかを検証した結果、「涙目」と「たすけてください」という直接的メッセージが高評価となり採用に至った。
結果的に、このアイデアは、ナッジコミュニケーションの4要素であるEASY(簡単に)/ATTRACTIVE(印象的に)/SOCIAL(社会的に)/TIMELY(タイムリーに)を満たす行動設計としても整理できる。
実証実験から全国展開へ
まず2024年10月30日に東京都・神奈川県の一部店舗で1か月の実証実験を開始。その結果、値下げした商品の購入率が5%向上。これを全国の店舗に拡大した場合、食品ロスを年間で約3,000トン削減する効果が見込まれ全国展開が決定。2025年3月から全国16,000店に順次導入してからは、購入率が10%以上向上した店舗も。食品ロスの削減は、つまりは売上であり、フランチャイズからも喜びを持って受け止められている。
「安いから買う」ではなく、「助けたいから買う」
涙目シールは「たすけてください」という呼びかけを通じて、購買を「商品を救う行為」「食品ロス削減への貢献」というポジティブな感情に変換。その結果、これまでは値下げ商品を買うことに抵抗があった人でも、「助けている」という肯定的な感情で値引き商品の購入を後押しした。今では涙目シールを探して購入する人や、シールを集める人まで出てきている。

ファミマの取り組みから、社会のツールへ
ファミリーマートはこうした取り組みの成功を自社内で完結させず、実験開始から1年後に新たに4つのデザインを追加し、誰でも使えるライツフリー素材として公開。この大胆の行動は大きな注目を集め、初週に5000件以上のダウンロードがあった。この取り組みに賛同した目黒区は商店街組合に呼びかけを行い、惣菜屋やパン屋など、複数の個人店がすぐさま涙目シールを活用。割引がないにもかかわらず、このイラストだけですぐに効果が出ているという。
正直に「助けて」と訴える企業と、助ける消費者
涙目シールは、「企業が課題(食品ロス)を隠さず、正直に”助けて”と訴え、それに消費者が応える」という感情的なつながりを生み出すことができた事例だ。適切な呼びかけと工夫で、企業と消費者が一緒になって社会課題の解決に協力していけることを提示することができたという意味で、大きな意義がある取り組みである。
審査委員 評価ポイント
PR。パブリック・リレーションズ。この企画は、“おにぎりそのもの”と人との関係(リレーション)をそっと結び直して、食品廃棄の問題に挑んだ。企業でもお店でもなく、おにぎりとお客さんの関係。その斬新さに驚きました。
受賞者コメント
実証実験からはじめたプロジェクトが、全国展開され、着実に食品ロスの削減につながり、つまり店舗の売上にも貢献。このことだけでも嬉しいところに、こうして評価いただけたのは素直に嬉しいです。 2cmにも満たないシールでも行動が変わり、食品ロスの削減につながる。この成果を社会と共有するために、フリー素材として公開したのも自然な流れでした。涙目シールは自由に使っていただけますので、日本中に広がっていくことを願っています。
The Breakthrough Company GO Creative Director 砥川直大