事業主体:株式会社ダイヤ
エントリー会社:株式会社ダイヤ/株式会社はずむ
老舗ベーカリーが直面した従業員のエンゲージメント向上という課題に対し、商品開発段階からPR視点を組み込んだ「おかんパン」を開発。地元客からメディア、観光客へと話題を拡散させ、外部評価を従業員の誇りへと転換。内部課題を外部評価で解決するアプローチを実現した。

背景:社内エンゲージメント向上を通じた定着率維持が急務
大阪で約80年の歴史を持つベーカリー「クックハウス」(20店舗展開)では、従業員の自社への誇りが、十分に言語化・可視化されていなかった。離職率は全産業平均を下回っていたものの、飲食業界全体の離職率(26.6%)を考えれば定着率維持は急務であった。加えてコロナ禍による通勤需要減少、大阪万博を控えた人材獲得競争の激化、域内人口減少リスクが重なり、収益構造の多様化と社内イノベーションの機運醸成が不可欠な状況にあった。
戦略:第三者評価を起点とした逆転の発想
課題解決の鍵は、「外部評価が内部の誇りを育てる」という発想にあった。「地元から愛されている大阪のブランド」と「他社に負けないパン作り技術」への第三者評価獲得を戦略の核に据えた。
戦略の要諦は、既存の人気商品「ミルクパン」(1日3,000個販売)にキャラクター焼印とパッケージ変更という最小限の改良を施した点である。これにより「以前から美味しいパンを作っていた」というブランド価値の再認識を促し、従業員の自己効力感向上を実現した。地元客→メディア・著名人→観光客→従業員という好循環を設計し、外部評価を最終ターゲットの従業員に還流させる仕組みを構築したのである。



施策:話題化必然性と戦略的希少性の実装
施策は三段階で展開した。第一段階は内部基盤構築である。従業員参加型ワークショップで「毎日の気分をふくらませる存在」というブランド価値を発見し、「大阪のベーカリーだから出せる商品」として「おかんパン」のコンセプトを開発した。大阪ならではの「おかん」キャラクターと「おかんからのエール」をパッケージ化し、インパクトと共感を両立。話題化要素を従業員参加型で開発することで当事者意識を醸成した。
第二段階は外部展開である。2024年7月に既存20店舗で販売開始。新大阪駅・伊丹空港ではあえて販売せず「わざわざ来店する価値」を演出し、戦略的希少性を創出した。著名人からの自発的推奨を獲得し、メディアが「新しい大阪土産」として取り上げた。地元客→著名人→メディアへと広がる戦略的連鎖により、計画的な話題創出を達成した。
第三段階は成果の内部還流である。東京のイベントや京都の百貨店催事からも声がかかり、従業員が他エリアでのポジティブな声に触れる機会を創出。メディアやSNSでの露出成果は社内で共有し、成功体験を徹底的に還流させた。2025年6月には従業員発案の「おとんパン」が誕生し、8月には大阪府の大阪名品認証を取得するなど、継続的な話題化サイクルを確立した。
成果:数値が証明する組織変革の実現
第三者推奨の創出実績は圧倒的である。TV・Web露出650件超(放映時間50分超)を記録。Instagramフォロワーは3.3倍の1万人超、#おかんパン投稿3,000件以上となった。
そして、従業員エンゲージメントは劇的に向上した。「自分たちのこだわりに注目してもらえてやりがいが生まれた」「家族が『すごいね』と言ってくれた」という声が寄せられ、離職率は1年で半数以上減少、採用応募者数も増加した。事業面では、おかんパンの売上は1年で1億円超を達成。購入客の客単価も上がり、既存商品への波及効果も創出。2025年7月には新業態をオープンし、外部評価→内部の誇り→さらなる挑戦という好循環が組織変革を実現した。

審査委員 評価ポイント
商品開発プロセスの初期段階からPR視点を入れて、新たな大阪名物となるパンを生みだすことに成功し、従業員エンゲージメント向上や離職率の低下、売上にも大きく寄与した点が評価されました。
受賞者コメント
「大阪のパン屋であること」を自信とともに語れるようになったことが、何よりの成果である。商品開発プロセスの初期段階からPR視点を入れて、新たな大阪名物となるパンを生みだすことに成功し、第三者評価を用いて、従業員エンゲージメント向上や離職率の低下、売上にも大きく寄与できた。
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