審査委員長

田上 智子
株式会社シナジア
代表取締役
本年度は、昨年を上回るおよそ100件もの熱意あふれるエントリーをいただきました。受賞の栄誉に輝かれた皆様に心よりお祝い申し上げますとともに、多角的な議論を重ねてくださった審査団の皆様、そして運営を支えていただいた日本PR協会顕彰委員会、事務局の皆様の多大なるご尽力に、深く感謝申し上げます。
本年度の審査では、「思想としてのパブリックリレーションズ」を体現する活動を見出すべく、三つの観点を重視いたしました。第一に、事業と社会を貫く自分らしさで本質を突く「オーセンティシティのある戦略であるか」。第二に、PRらしく、対話を通じて社会のうねりを生む「マルチステークホルダーとの共創があるか」。そして第三に、次代のパブリックリレーションズを拓く覚悟を示す「パイオニアシップのあるプログラムなのか」です。
グランプリを受賞された能登半島地震における広報活動は、命を守る現場での「ベーシックの徹底」が、公共サービスの未来を拓く強いパイオニアシップとなりました。またゴールドの「金龍のしっぽプロジェクト」は、対立という困難な状況をPRらしい「笑い」と「物語」で融和させ、しなやかな合意形成のあり方を示してくださいました。
社会の分断や危機が深まる現代において、PRパーソンは未来への対話を創り出す役割を担っています。本アワードで見出された数々の希望の光が、業界全体の発展を牽引し、より良い社会を築く大きな原動力となることを心より確信しております。
【動画】田上審査委員長 全体講評コメント
表彰式・受賞者プレゼンテーション 2025年12月10日 時事通信ホールにて
審査委員(氏名50音順)

植野 友生
味の素株式会社
食品事業本部 マーケティングデザインセンター コミュニケーションデザイン部 コミュニケーション戦略グループ PRチーム長
審査を通じて、パブリックリレーションズが本来持つ力と、可能性を改めて実感しました。
実務において「PR」という言葉や概念は、時に広義に、時に限定的に用いられており、その解釈や役割はより多様化してきているように感じます。今年のエントリーにおいても、取り組む課題や対象とするステークホルダーはさまざまでした。
その中で、受賞エントリーに共通していたのは、パブリックリレーションズの本質である「ステークホルダー・社会との合意形成、信頼関係を深めるためのコミュニケーション」が丁寧に紡がれており、その結果として大きな「成果」が出ていたことです。
また審査の過程で印象的だったのは、取り組みの背景に存在する「人の熱量」です。AIやテクノロジーの進化により、効率的な情報発信が可能になる一方で、社会やステークホルダーと真摯に向き合う1人1人の姿勢や覚悟は、何物にも代え難いものでした。今回の受賞エントリーからは共通してそうした人の温度感が伝わってきました。
PRアワードを通じてみなさまとともに日本のPR業界のさらなる発展を目指し、今回の審査で得た気づきを日々活かしながら、PRという仕事が社会やビジネスにおいてより良い形で貢献し成果を生み出せるよう、PRに携わる一人として努めていきたいと思います。改めまして、本アワードに関わるすべてのみなさまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

木村 友輔
株式会社博報堂
PR局 PRプラニング1部 部長 / チーフPRディレクター
「PRは、ここまでいけるのか」98件に及ぶ審査を経て、率直に思った感想です。
難病患者の居場所から、経営戦略の仲間づくり、サプライチェーン開拓、社会課題解決としての福利厚生、新たな寿命の概念、美しい言い訳のデザイン、笑いの合意形成、衣食住に次ぐ情報のライフライン…キーワードをあげたらキリがない、PRが社会のシステムと密接にかかわり、それを前進させることができる、PRの可能性に改めて気づかせてもらった濃い示唆と刺激に満ちた審査となりました。
PRが持つ原点に、多くの拡張や深化が見られた“原点進化”とも言えるアワードだったと思います。
原点からの進化を示す、たくさんの「&」な発見がありました。中でも印象に残ったのは、PRデザインの土台となる“ビジョン・アクション”に“&パッション”が重要であること。受賞された取り組みには、いずれもPRパーソンの泥臭さ、熱量、愛情がにじみ出ていたと感じます。そんな“心的インパクト”のようなものが、情報の質感に深みを与えていました。
「PRとは味方を創る技術である。」僭越ながら、私が大切にしている定義です。
そのハイレベルな技術の見本市に審査という形で参加できたことを光栄に思うと同時に、エントリーして下さった皆様にお礼を申し上げます。そして、受賞された皆様、おめでとうございました。

国枝 智樹
上智大学
文学部 新聞学科 准教授
今回、初めてPRアワードの審査に参加させていただきました。まず率直に、PR実践の水準の高さと多様性に驚きました。日々の実務の中でここまで丁寧に構想され、社会との接点を真剣に考え抜いた取り組みが数多く存在していること自体が、日本のPRの成熟を示しているように思います。あらためて、エントリーされたすべての企業・団体、実務に携わられた皆さまに敬意を表します。
以前、日本広報学会のプロジェクトで「広報PRとは何か」を深く検討し、広報の新しい定義を作成する作業に参加していましたが、今回は「優れたPRとは何か」について考える、大変貴重な機会となりました。審査を通じて特に印象に残った点は、主に二つあります。
一つ目は、プロジェクトのPR的側面がどのように表現されているかという点です。各プロジェクトにはさまざまな側面があり、どこがPR上の判断や設計、成果として具体的に言語化されているかによって、評価の印象が大きく異なることを実感しました。
二つ目は、製品・サービス自体の社会的意義や重要性と、PRの革新性をどのように切り分けて評価するかという点です。PRを評価するアワードである以上、後者を重視するのは当然ですが、両者を区別して考えることの難しさを痛感しました。
本アワードは、数多くの実践や知見の中から、「優れたPR」として評価される判断や設計を社会に示す点に大きな意義があると感じています。受賞事例が、次の実践へとつながっていく場として、今後も重要な役割を果たしていくことを期待しています。

小林 正史
株式会社プラップジャパン
戦略企画部 部長 / Group Planning Director
意見の相違・対立をPRコミュニケーションで乗り越える。黒か白かの議論で敵をつくるのではなく、新たな視点や考え方を論点に設定して仲間を増やし、世の中をちょっと明るくする。
そんなテーゼとアンチテーゼの二項対立を止揚(アウフヘーベン)するPRならではのチカラを感じさせるエントリーが集まった、素晴らしいPRアワード2025でした。

竹下 隆一郎
株式会社TBSテレビ
特任執行役員 Cross Dig with Bloomberg チーフコンテンツオフィサー
PRのリレーションは明らかに新しい時代に入ったと感じました。企業が向き合う相手は、もはや「消費者」や「生活者」だけではありません。投資家、地域コミュニティ、街づくりに関わる人々などとの関係性をどう設計するかが、PRの中核になりつつあります。
生成AIやLLMでは代替できない、人間の感情や信頼、現場の文脈に根ざしたニーズをきちんと捉えているPRこそが価値を持つ――そのことを、今回の受賞作ははっきりと示していました。

河 炅珍
國學院大學
観光まちづくり学部 准教授
受賞された皆様、改めておめでとうございます。昨年に引き続き、PRの担い手が営利組織に限らず様々な団体・組織へと広がっていることを実感しました。マーケティングやブランディングと厳格に区別されるのではなく、相互に影響し合いながら価値を生み出す事例も多く見受けられます。PRが特定の手法や領域にとどまらず、コミュニケーションの基盤となりつつあるからこそ、短期的な成果や話題性のみならず、その本来の機能を改めて軸に据える必要生が浮かび上がっています。ステークホルダーとの関係性をいかに育み、社会とどう関わっていくのか、組織の姿勢が問われる時代です。今回の授賞事例が、PRの現在地を示すと同時に、今後の可能性を考える上でも示唆を与えてくれることを期待しています。

橋本 良輔
株式会社電通PRコンサルティング
統合コミュニケーション局 次長
今回のエントリーも総じて示唆に富むものばかりでした。皆さんの情熱に触れ、感動を頂いたことを改めて感謝いたいます。受賞案件は成果の可視化はもちろん、人の心がどうすれば動き、行動に繋がるのかという作用を理解し、表現や活動に帰着したもの多かったです。また選出されなかった案件も、継続していければ受賞レベルに到達できると感じるものも多かったため、改めて次年度以降もエントリーしてほしいと願っています。

南部 かおり
シック・ジャパン株式会社
マーケティング本部 コミュニケーション部長
私たちが今いる「情報過多の時代」は、1日に接する情報量が、かつての一人の「一生分」にも匹敵するといわれ、AIによってさらに多くの生成情報が世の中に溢れかえっています。こうした環境下だからこそ、マルチステークホルダーとの相互理解と信頼関係を築くPRの重要性は、ますます高まっています。そしてPRパーソンは、もっと事業や社会のど真ん中へ入っていくことが求められているのではないでしょうか。
事業会社の立場からも今回の審査を通じて多くの学びと発見、そして刺激をいただきました。
思わず嫉妬するような素晴らしい施策に数多く出会い、審査という枠を超えて、PRの持つワクワクや可能性を改めて実感できる貴重な機会となりました。
本アワードが、パブリック・リレーションズ本来の意義と価値を、より多くの方々に届ける大きなきっかけとなることを願っています。受賞された皆さま、そしてご応募いただいたすべての皆さまに、心より敬意と感謝を申し上げます。

横田 和明
井之上パブリックリレーションズグループ
株式会社日本パブリックリレーションズ研究所 取締役副社長
ご受賞された皆さま、おめでとうございます。
今年はエントリーシート(ES)改定で、ビジョンや目的達成に向け、様々なステークホルダーとの関係性のマネジメントについて記載をより増やす構成になりました。結果、甲乙つけがたい応募が多く、書類審査の段階から大いに悩みました。
課題先進国であり、新たな挑戦には組織内外で批判が押し寄せ、一歩踏み出しにくい日本の様相が、ESをめくるたびに迫ってきました。
その中で、
●テクノロジーやデザインの力も活かしつつ、広い視野でステークホルダーを捉え、現場に足を運んで、人に会い、観察し、時に膝を突き合わせた双方向性コミュニケーションでにじり寄りながら事業を進めていく
●想いや情熱、知恵やユーモア、行動力やチーム力を合わせながら、地道に地道に進み続けて、関係性を高め、機会を創り出していく
●生み出した成果を次に繋げていく
ことで、壁を乗り越える事例が多々ありました。
パブリックリレーションズは、これからの社会を照らし続ける希望の灯だと審査を通じて改めて感じました。
惜しくも今年は受賞に届かなかったものの、今後に大きく期待をしたい取り組みもありました。
来年もぜひ応募を重ねていただきたいです。
※所属・肩書は 2025年7月1日時点