事業主体:石川県
エントリー会社:株式会社博報堂/株式会社北陸博報堂/株式会社博報堂プロダクツ/株式会社オズマピーアール/株式会社 レオン
能登半島地震において石川県が組織した「リアルタイム広報戦略チーム」は、SNSのデマ対応、発災1ヶ月での経済復興、職員のメンタルケアを軸に、攻めと守りの広報を展開。未来予測型の戦略でステークホルダーを繋ぎ、災害対応の新たな標準を提示した。

災害大国日本に不可欠な「未来予測型」広報への挑戦従来の「後手」の対応から脱却し、発生し得る課題を先読みする。
2024年1月1日に発生した能登半島地震は、元日の発災や厳しい地形、高齢化地域といった特殊性から初動対応が困難を極めた。こうした状況下で石川県は、情報の遅れが命や復興の遅滞に直結するという危機感のもと、博報堂等と知事直轄の「リアルタイム広報戦略チーム」を編成した。
解決に挑んだ課題は4点。1つ目に、県民や全国への迅速かつ的確な情報発信。2つ目に、SNSで氾濫するデマの抑止。3つ目に、地震の風評被害による観光需要激減に伴う経済復興。そして4つ目に、過去の震災でも深刻な問題となった、過重労働に起因する自治体職員の自殺未然防止である。従来の自治体広報に多く見られた「問題発生後に対処する」受動的な姿勢を改め、PR・マーケティングの知見を駆使して課題を先回りして解決する「未来予測型」の戦略が実装された。

迅速な情報発信とデマを上書きする「カウンター広報」県公式SNSを一次メディア化し、信頼性の高い情報を最速で届ける。

戦略の核となったのは、知事、県広報監、PRの専門家、クリエイターらが県庁に常駐し、即断即決を可能にする体制である。SNSの論調や被災地感情をリアルタイムで分析し、県公式Xを新聞より早い一次情報メディアとして運用。特にデマに対しては、正しい情報を引用して拡散させ、事実でデマを上書きする「カウンター広報」を複数回実施した。
この取り組みは、のべ12万件以上の「いいね」を獲得し、「知事が被災者を軽視している」といった風評の鎮静化に大きく寄与した。
史上最短で実施した経済復興と職員の命を守るインナー広報応援の気持ちを消費行動へと結びつけ、復旧・復興を加速させる。
攻めの広報として、発災わずか1ヶ月後の2月1日から「石川県 応援消費おねがいプロジェクト」を開始した。「買って応援」等のロゴを無償提供し、県内外の自粛ムードを支援のエネルギーへと転換。このロゴは3万箇所以上で露出され、北陸新幹線延伸時の経済効果最大化に貢献した。延伸後、経済は30%回復し、現在は震災前を上回る集客を実現している。

また、隠れた社会問題である「職員の自殺」を防ぐため、産業医科大学の専門家と連携したメンタルケア動画の制作や研修を実施。知事自らがヘルスケアの重要性を発信することで、凄惨な現場で働く職員のケアを徹底し、結果として職員の自殺者ゼロを達成した。


災害広報の知見を全国の自治体へ共有し未来に備える
災害広報のノウハウを凝縮した冊子を配布し、未来の被害を抑止する。
一連の活動で得た知見は、石川県内だけに留めず、全国の自治体への共有が図られている。膨大な報告書ではなく、誰もが読みやすい8ページの冊子「災害広報で迷わないための15のヒント」として再構成。今後予測される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備え、東京都をはじめとする全国自治体への配布を開始した。自治体の枠を超えたこの取り組みは、全国の広報担当者からも高い評価を得ており、日本の災害対応力の底上げに貢献するソーシャルグッドな活動となっている。

審査委員 評価ポイント
災害大国日本において、行政主体の「命を守る広報活動」の基本をプロボノチームと連携し高次元で実践。デマや風評被害にタイムリーに対応し、関連死の抑制に貢献しました。斬新さよりも、この活動が次世代の行政広報の「お手本」となり、未来の公共サービスを切り拓くパイオニアシップを発露した意義を評価しました。
受賞者コメント
グランプリ授賞、大変光栄です。石川県を想い、ハートのロゴマークを活用してくれた皆様に心より感謝いたします。災害時広報は、被災者や支援者に命を守るための行動変容を促すことが目的であり、今後の災害においても命を守るPRの発想・手法が有効です。
石川県広報監 中塚 健也