朝日新聞経済部長 福間氏が語る「新聞のデジタル改革」と「広報担当者に求めること」

第238回定例研究会:2025年12月2日実施

2025年12月2日に開催された第238回定例研究会は、朝日新聞社 経済部長 福間大介氏が講師として登壇されました。テーマは「朝日新聞のデジタル改革と経済報道」。新聞業界全体が構造的な変革期を迎える中、朝日新聞経済部がいかなる取材体制を敷き、どのように「紙」から「デジタル」へと重心を移しているのか、またメディアの視点から見た広報・PR担当者との理想的な関係構築について、現場のリアルな実情を交えてお話しいただきました。

講師略歴

朝日新聞社 編集局 経済部長 福間大介(ふくま だいすけ)氏

1974年松江市生まれ、1997年朝日新聞社入社。大阪経済部、東京経済部で流通・食品、金融・交通、電機、中央省庁、首相官邸等を幅広く取材。2019年から育児のため1年間休職しウィーンに在住。復職後の2020年4月から東京経済部次長、2022年6月からゼネラルエディター補佐として経済報道を担当したのち、2025年4月から現職。

講演内容

1. 「夕刊」から「スマホ時間」への大転換

「『紙もデジタルも』は過去の話。現在は完全にデジタル中心のワークフローに移行しています。 かつての記者は『夕刊の締め切り』で動いていましたが、今は『読者がスマホを見る時間(通勤・昼休み)』が勝負」と、福間氏は編集局のデジタル改革について強調されました。これは業界全体が大幅に前倒しになっていることを意味し、広報担当者にとって、今まで以上に早く情報提供する必要があると考えられます。

2. 経済部の報道方針

朝日新聞経済部の報道方針について、「成文化された明確な報道方針というものは存在しません。むしろ、個々の記者が持つ強い問題意識や価値観の集合体、それこそが私たちの報道方針そのものであると言えます。」と福間氏は説明されました。

とはいえ、その集合体の中には、経済部として暗黙のうちに共有されている価値観や、特徴的な報道の切り口が存在し、これらが集まることで、朝日新聞経済部としての「らしさ」が形作られているそうです。具体的には「構造的な課題の掘り起こし」「人間ドラマ」「ファクトに基づく批判」等とのことです。

3. 記者が求めているのは「宣伝」より「対話」

最後に、メディアと企業がより良い関係を築くために、広報担当者へ求める具体的なポイントが示されました。
「正確・迅速・丁寧」が信頼の礎で、特に事実確認に対しては、即座に「確認して折り返す」という対応ができる担当者が信頼されます。また、単なる製品の宣伝ではなく、「なぜ今、広く社会に伝える必要があるのか」というニュースバリューを共に考える対話が求められています。
さらに、不祥事の際は「隠蔽は逆効果」であり、トップによる迅速かつオープンな説明が信頼回復の鍵となると述べられました。 また、日々大量に届くプレスリリースについては、「見出しでニュースバリューが分かる簡潔さ」と「すぐに連絡が取れる担当者情報の明記」が重要であるとのアドバイスがありました。

質疑応答

講演後の質疑応答では、参加者から「アサヒグループホールディングスのサイバー攻撃会見のタイミングは?」、「数値目標(KPI)と記事の質の関係」、「デジタルで読まれるようになった記事の傾向」、「報道方針の具体例と広報担当者との関係」といった質問が寄せられ、それぞれ丁寧にご回答いただきました。

まとめ:最後は「人」対「人」

「記者は広報の皆さんとの対話を通して成長します。だから、普段からよいお付き合いを!」と福間氏は語られました。
データやツールが進化しても、最後にモノを言うのは「信頼関係」。 特定のネタがない時こその地道な対話が、最強のメディアリレーションズであると気づかされる熱い講演でした。

文責:井之上パブリックリレーションズ 勝俣健太