第一生命ホールディングス株式会社
執行役員 Group Chief Brand and Culture Officer 坂本 香織

こんにちは。坂本香織です。
私は第一生命ホールディングスで「Group Chief Brand and Culture Officer」という役割を担っています。こちらは当社では2025年4月に新設された役職であり、私のミッションは、グループの理念を社員の皆さんと共有すること、そして理念に基づくブランド戦略をダイナミックに推進していくこと、また、成長に向かって挑戦・変革する企業文化を作っていくことです。
今日は企業理念とブランドの関係についてお話してみたいと思います。
企業理念、とくに「パーパス」が注目されて久しいですが、「パーパス」とは、「企業の社会における存在意義」です。企業が改めて「自身が何者か、社会が持続的であるためにどう貢献するか」という北極星を明らかにすることで、社員が力を発揮しやすくなる。これが企業理念やパーパスの一番の意味だと私は考えています。パーパスを設定する企業が増えている背景には、社会の大きな変化の中で、多くの企業が「祖業」(創業時から行ってきた事業)からビジネス領域を変化・拡大することが必須となり、改めて自分たちが何者かを定義しなおし、社員をはじめとするステークホルダーと共有することが必要になっている、ということがあります。

そして、パーパスをはじめとする「企業理念」と「ブランド」は繋がっています。
以前に私は仕事をしながら、大学院でこの「企業理念とブランド」について研究をしていたのですが、そのときの研究では「企業理念を浸透することは、ブランドの価値の向上につながる」ということがわかりました。
このメカニズムを示したのが、以下のイラストです。楕円形に沢山立っている人が、社員です。真ん中にいるのがお客様やお取引先、地域の方々、株主など、ステークホルダーです。ブランドは、ありとあらゆる、企業とステークホルダーの接点で、ステークホルダーの心の中に徐々に形成されていきます。社員一人ひとりが企業理念を実現しようという志をもって、行動にうつしていく。そうすることで、例えば営業活動を通じて、あるいは商品サービスを通じて、コールセンターで、地域活動で、SNSでの発信を通じて…等々、それぞれの接点で、お客様をはじめとするステークホルダーの方々が、その企業のブランドに共感したり、いいねと思ってくれたりします。こうしてブランド価値が創られていきます。

つまり、企業理念と企業ブランドは一連のものです。
現在の社会では、かつてないほど爆発的に情報量が増え、商品サービスの種類も増え続けています。生活者は商品・サービスについて機能だけで購入判断をするのではなく、その企業の価値観や企業姿勢に共感して判断をするということがいっそう増えています。採用においても、その企業のパーパスやブランドに共感できるかというのが求職者にとって重要な意思決定要因になっています。「企業理念」そしてそこからつながる「ブランド」はまさに、企業の競争力そのものということができます。
私は広報とは「企業理念を社員のエネルギーに、企業、社会のエネルギーに変える仕事」だと考えています。上の図のようなメカニズムが発動するためには、社員1人ひとりが理念に共感し、自分事化して、力を発揮できるように働きかけることが必要で、これは広報にとってとても重要な業務です。また「ブランド」はステークホルダーの心の中に形成されるものですから、一方通行ではなく「ステークホルダーの視点を社内にフィードバックすることで、経営をよりよくすること」も同じように重要だと考えています。
こう考えると、広報の意味は経営にとってとても大きいものと言えると思います。
日本パブリックリレーションズ協会での活動を通じて、ぜひ多くの方と一緒に、この広報という仕事を掘り下げ、より良きものにしてていきたいと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。