講演レポート:2025年10月22日実施
2025年10月22日に実施された「コミュニケーション能力向上講座」について、当日の模様をレポートいたします。
講師は17万部のベストセラー『最高の話し方』著者の岡本純子氏(コミュニケーション戦略研究家/エグゼクティブ・スピーチコーチ/株式会社グローコム代表取締役社長)。
新聞記者やPRコンサルタントを経て渡米され、ニューヨークで学ばれた【「伝える」だけでなく「伝わる」コミュニケーション法】について、豊富な経験をもとに理論と実践の両面からお伝えいただきました。

講師略歴
コミュニケーション戦略研究家/エグゼクティブ・スピーチコーチ/株式会社グローコム代表取締役社長
岡本 純子(おかもと・じゅんこ)氏
新聞記者として鍛えた「言語化力」「表現力」、コンサルタントとして培った「ブランディング」の知見、そしてニューヨークで学んだ「パフォーマンス力」「科学的アプローチ」を融合し、独自のコミュ力メソッドを確立。
これまでに都銀、商社、電機、自動車、通信、官僚・政治家など、1,000人を超えるトップエリートのプレゼン・スピーチ指導に携わってきた。
著書『世界最高の話し方』は17万部超のベストセラー。
『2021 Forbes JAPAN 100』に「今年の顔」として選出され、年には『世界最高の雑談力』を出版。
同年月には次世代リーダー向けの「世界最高の話し方の学校」を開講。
コミュニケーションは科学である!
「雑談は得意ですか?」その一言から始まった今回の講座。 受講者の皆さまも圧倒的に苦手だと感じている人が多いようでしたが、一般的に雑談が得意とする人の中には「自分の話をしているだけ」の人も多いとのこと。
岡本氏から受講者へのいくつかの質問などがあり、日頃受講者自身が行っているコミュニケーションを思い返してみるところから講座は始まりました。

日本人がコミュニケーションに対して自信を持てない理由として、話し方の上達において不可欠である「恥をかく回数・経験」が少なすぎることにより、失敗を恐れず挑戦する姿勢が弱いからだと岡本氏は言います。
しかし、コミュニケーションは実は生まれつきの才能ではなく科学であること、そして、学習と実践によって「誰でも習得可能な後天的なスキル」であると力強い言葉で語りました。
講義内容の概要
講座ではまず、日本人がコミュニケーションを苦手とする背景について言及。
日本の教育制度では「話す」訓練が軽視され、正解の暗記が重視される傾向が強く、また文化的にも「謙遜」や「以心伝心」が美徳とされるため、言葉による表現が抑制されがちになるとのこと。
実際に、日本人の約61%が自分を「コミュ障(コミュニケーション障害)」(※)と認識しているという調査結果も紹介されました。その上で、効果的なコミュニケーションを実現するための3つの法則が提示されました。
さらに、プレゼン時の緊張を和らげるための非言語的テクニックも豊富に紹介され、姿勢・笑顔・声の抑揚が印象形成に与える影響についても解説。
(※):ここで言う「コミュニケーション障害」は、医学上の定義ではなく、「コミュニケーションが苦手な状態」を指します

講座の後半では、現代におけるリーダーシップのあり方についても言及がありました。従来のトップダウン型の指導ではなく、部下の意見を引き出し、共感を通じて力を与える「サーバント・リーダーシップ」が求められているとのこと。これは、組織の中で信頼関係を築き、持続可能な成果を生み出すために不可欠な姿勢となります。
また、女性リーダーが直面する「ダブルバインド(矛盾するメッセージを同時に受け取ることで混乱を来たすこと)」の課題についても具体的な事例を交えて解説されました。能力と好感度の両方が高くないと評価されにくいという構造的な問題に対し、笑顔が戦略的に活用されていることが紹介され、「印象マネジメント」の重要性が強調されました。
質疑応答
場面に応じた話し方の工夫や、声のトレーニングによる変化、PRの本質としての「社会との対話力」などが取り上げられました。特に、経営者やリーダーが自らの話し方によって社員の士気や組織の雰囲気に影響を与えるという視点は、非常に実践的で示唆に富んでいました。
取材後記
本講座を通じ、AIが急速に進化し文章作成や情報整理などの業務を代替する時代においても、人間が持つ「心を動かす力」としてのコミュニケーション能力が重要なスキルであることを再認識しました。単に情報を伝えるだけでなく、相手と心でつながり、行動を促す力こそが、これからの時代に求められる本質的な能力です。
今後は講義で得た知識を日常や仕事の中で意識的に実践し、人間にしかできない「高度なコミュニケーション能力」の価値と必要性について考え、自分自身の「小さなボトル(殻)」を破りながら、対人力を高めていきたいと感じました。
文責:(公社)日本パブリックリレーションズ協会 事務局長 須田基一