企業ミュージアム

ステークホルダーにリアルで直接訴えかけるPRの拠点

企業が自社の商品や事業、業界の歴史などをミュージアムのような形で一般公開している施設のこと。企業博物館と呼ばれることもあり、海外では Corporate Museum の表現が用いられている。自社内外のステークホルダーが利用者であると想定することによって、企業の歴史の保存や発信だ
けではなく、企業アイデンティティの構築、企業のコアバリューの再確認、従業員の企業への帰属意識の醸成、ブランドのプロモーション、CSRの表現など、PRにおける様々な役割を担うことができる施設となる。企業の中には、地域社会や従業員など、ターゲットステークホルダーをしぼって
施設を運営しているところもある。

アミューズメント機能の向上

国内では企業ミュージアムが新たに設立されるだけではなくリニューアルされる事例も多い。こうした中で近年増えてきている傾向の一つが、実際に展示物を動かしたり、オリジナルの商品をデザインしたりして利用者を楽しませるアミューズメント機能の向上である。楽しさが強調されるこ
とによって企業のコアバリューの発信力が弱くなることも危惧されるが、両立を実現できている企業ミュージアムが多い。

従業員に親しまれる企業ミュージアムの重要性

従業員に自社のコアバリューを理解してもらう場として企業ミュージアムを用いている企業は多い。そのような企業において重要となるのが、従業員が自社のミュージアムに対して親しみを持っている状態をつくりだすことである。従業員に親しまれることで、利用頻度が増え、コアバリュー
に対する理解や共感が深まり、それを体現した事業活動や商品企画の実現の可能性も高まる。また、他の人にミュージアムを通じて自社を推奨するといった対外的なコミュニケーションの機会の増加や質の向上といった効果も期待できる。企業の従業員が生き生きと自社のミュージアムを案内する。そのような状況が今後の企業ミュージアムの理想形の一つといえる。

執筆=高柳直弥(大正大学 地域創生学部 准教授)