グランプリ

3.11を人々の記憶にとどめる広告の設置で、防災リーディング企業のイメージを獲得。

事業主体:ヤフー株式会社
エントリー会社:ヤフー株式会社
応募部門:ソーシャル・コミュニケーション部門


 

東日本大震災から6 年。閉館直前の銀座ソニービルに、巨大な屋外広告を設置。報道やネットニュースでは自分ごと化しづらい津波最高値の16.7mを想像してもらい、人々の防災意識を向上させるとともに、「ヤフー=防災リーディング企業」のイメージを確固たるものとした。

防災意識の啓発プロジェクトを発足。

ヤフーは、災害が起こった際に、Yahoo! JAPANトップページやスマートフォンアプリのプッシュ通知などでいち早く災害情報をお知らせしている。しかし、震災から6年が経ち、その記憶の風化や、災害に対する意識の希薄化が叫ばれるようになった。そういった状況の中で、いま一度みなさんに災害の脅威に目を向け、防災意識を高めてもらいたいという願いから本プロジェクトが始まった。
企画の段階では、いろいろとアイディアを出し、検討を重ねた。最終的には、災害の脅威を想像してもらうことが、最も自分ごと化につながり、強く防災を意識してもらえるようになると考え、本企画の決定に至った。もちろん、印象の強い広告になることが想定され、社内でも賛否両論があった。ただ、災害情報を発信する企業のスタンスとして、防災意識の啓発はある種の責任であると考え、丁寧な議論を通してネガティブとおもわれる要素を一つずつ解決し、実施に至った。
津波の高さを体感してもらう方向で企画が決まった後は、とにかく印象強い形にすることにこだわった。赤線の見せ方は、矢印にしたり目盛りをつけてみたりしたが、やはりシンプルに一本の線にすることが最も視覚的に津波の高さが伝わると感じた。
また、メッセージの内容も、ヤフーの思いを真摯に伝えることに注力し、入稿直前まで変更を繰り返しながら調整を続けた。特に、被災された方々が不快な思いをすることの無いよう、また、単なる恐怖訴求になってしまわないよう、周囲へのヒアリングを実施し、慎重に進めた。掲出する場所については、人通りが多く、クリエイティブがよく見通せる場所として、銀座ソニービルを選んだ。

SNSに反響コメントが続々と!

広告が掲出されてからは、SNSで数多くの方に写真やコメントを寄せていただいた。「思ったよりも高い」「本当に恐ろしい」といった内容が多数見られ、実際に想像を膨らませ、改めてその高さに驚いた方も多かったのだと思う。また、そのSNSでの投稿を見て、実際に現地に見に行っていただいた方がたくさんいて、それが話題となり、多くのメディアにも取り上げていただく結果となった。

継続的な防災啓発活動へ。

この企画を実施して、一番印象深かったのは「この高さを目の当たりにして、自分が出来ることは何なのか、考えも及ばない」とのコメントを寄せていただいたことだ。実際、自分の想像を遥かに超える事象が起こった時には、人は思考が停止し立ちすくんでしまうものなのかもしれない。ただ、「想像以上の事は起こり得る」と心の内に認識し、備えをするだけで、いざという時の心持ちも変わってくるものなのではないかと思う。自分自身としても、改めて防災について考える機会となった。ヤフーとしても、今後も迅速で的確な災害情報をお届けするとともに、継続的な防災啓発活動に取り組んでいきたい。

文・ヤフー(株) 和気洋子


Voice from STAFF

(株)博報堂ケトル 橋田和明

災害なんて、もう起きるな。きっと、日本中の、世界中の人がそう思っている。でも、いつか多分きっと、起きてしまう。だからこそ、日々の防災に対する意識が大切だと思う。銀座のソニービルに一本の赤い線を描くことで、東日本大震災の「記録」を、人々の「記憶」に変えることを試みました。「いい広告」という反響よりも、多くの人が「防災のことを考えた」と反応してくれたことをとてもうれしく思います。