国際観光文化都市奈良と110周年を迎える奈良ホテル

株式会社奈良ホテル
執行役員 営業本部 営業部長 
福田 順

奈良と言えば、鹿を思い浮かべる人は、多いのではないでしょうか。鹿が横断歩道を渡っているのもビックリしますが、人と鹿が共存する奈良公園は、世界でも珍しいと言われています。1300年の歴史を有する奈良は、「はじまりの地」とも言われ発祥の物も多く、世界遺産の数も日本最多で、国際観光文化都市として、国内外から多数の観光客が訪れます。このような奈良に、2020年春奈良県内最大の会議場・観光交流拠点として、2,000人規模のコンベンションホールが開業予定で、隣接して日本初進出となる世界的高級ブランドJWマリオットホテルも開業予定となっています。

 奈良は、年間観光入客数約2489万人、宿泊者数は232万人(注)。入客数に比べて宿泊客数が非常に低いことで知られていますが、この背景には、宿泊施設が少ない上に、京都・大阪に隣接しているため、日帰り観光地となっていることが大きな要因と思われます。奈良では、宿泊室数を増やすべく、ホテル建設を誘致し、増加する外国人観光客への対応とコンベンションホールが活用出来るMICE(注)獲得に努めています。

 県は、MICEの国際競争力強化に向けた取組を行っており、観光庁の「マーケティング機能高度化支援事業」を受け、MICE誘致推進のための地域課題解決に対する取組や、他都市との差別化を図るためのMICEブランド構築等の取組が行われており、市では、奈良観光力強化事業として、「C-MICE」の商品造成と受入環境整備が行われております。(シーマイスは、Compact:比較的少人数規模で、Civic:地元の人・場所との触れ合いによって、Creative:新たなイノベーションが期待される3つのCのMICE獲得を意味します)

そんな中、今年110周年を迎へる奈良ホテルは、奈良公園内に隣接する小高い丘の上に建つホテルで、明治42年(1909 年)の創業以来、西の迎賓館として、明治44年乃木陸軍大将を初め、アイシュタイン・チャプリン・ヘレンケラー・東条英機首相・胡錦濤主席・ダライラマ14世他、多くの賓客を迎えてきました。桃山御殿風檜造りの本館は辰野金吾氏の設計で、館内随所の調度品が明治の時を思い起こさせ、その雰囲気は、まるで美術館に泊まるようだとも言われています。

大正時代のロビー

ホテルの歴史は、営業主体から見ると、大日本ホテル株式会社(明治42年)、鉄道院・鉄道省直営(大正2年)、財団法人日本交通公社(昭和20年)、株式会社都ホテル(昭和31年)、株式会社奈良ホテル(昭和58年)と多くの時代を重ねて来ました。時の流れと共に、ホテル本館も耐震工事が必要となり、100年の歴史の中で初めての大規模改修工事を、平成29年より3年間の行程で実施しています。
採用された耐震技術が、大規模木造建築物では、国内初となる東洋大学の松野浩一教授の考案した「複層斜交重ね板壁」。小幅板を本実で継ぎ、3層に斜交させて重ね、接着材等を使用せず、ビスのみによって枠材や既設部材と接合することで壁面を構成し、伝統構法の特徴であるしなやかさを活かすため、強さ・硬さ・粘り強さの3拍子揃った補強壁です。鉄筋を使わない技法で、十分な耐震性能を確保し、近代産業遺産である伝統的建築物奈良ホテル本館を継承することが出来るのです。

複層斜交重ね板壁模型

実際に取付られた複層斜交重ね板壁

奈良ホテル建設の景気は、日露戦争に勝った日本に、来遊する外国人が急増したことに始まります。まさに今日本は、外国人観光客の急増により多くの宿泊施設が必要となり新たなホテル時代を迎えています。

 2020年オリンピックから2025年大阪万博や大阪ベイエリアの夢洲IR構想など関西への観光客や訪日外国人は、ますます活発化します。JR西日本では、2019年春「おおさか東線」を全線開通し、新大阪から奈良まで直通1時間で結び、新幹線発着駅から奈良への利便性向上を図るなど、奈良方面への活動を強化しています。

奈良には、多くの高級ホテル建設計画があり、奈良ホテルには、脅威が差迫りますが、同時にチャンスも生まれる時でもあります。JWマリオットが進出してくるのは、奈良が世界的にも価値有る観光都市で有る事を証明しています。伝統を継承しながら新たな価値を見出し革新を行うため、奈良県・市と共に、滞在型観光地として、国際学会などのMICEの取込みや訪日外国人観光客へ奈良と奈良ホテルの魅力の発信を行い、次の100年に向けて歩んで行きたいと思います。

※年間観光入客数は、平成28年奈良県観光客動態調査報告書より
※MICE:Meeting(会議・研修)、Incentive(報奨・招待旅行)、Convention(学会・国際学会)
    Exhibition(展示会)の総称

 

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