組織の評判(Organizational Reputation)と会計

 

公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会

監事 岩渕 昭子 

 

PR協会との出会いは、「企業の評判(Corporate Reputation)」の研究会が契機だった。研究会で出会った当時の越智事務局長から、「経理担当者が退職し困っている。大至急、後任の育成を手伝って欲しい」との要請があった。私よりも著名な大学の先生の方が相応しいと思うとお伝えしたら、実践的な実務経験がある先生の方が好都合という話だった。経理人材を育てるというのは、私のライフワークの一つだったのでお引き受けした。証憑の確認から始まり、会計ソフトの導入など決算に向けて担当者と約1か月間、新富町の旧事務所でしばしば徹夜作業をした。約10年前のことだが、私の人生の中でも思い出深い一時期である。

 ところで、恩師の櫻井通晴先生から、企業の評判の研究を勧められて研究を始めた頃は、管理会計とどう結び付くのか不透明であった。評判の研究は経営やマーケティングなどの領域で、会計には馴染まないように思えた。私は会計が専門なので、予算や目標数字の作成は別として、結果としての財務上の数字は正直で正確でなければならないと思っている。良かれ悪しかれ、財務数値に影響を与える可能性がある「評判」は、悩ましいテーマであった。

 「評判」の研究は、構築、測定、CSRとの関係、リスクとの関係など、多種多様である。昨今では、企業の評判だけでなく、国家の評判、地方自治体の評判、大学の評判など、多くの組織で評判が意識されるようになった。国家の評判については、レピュテーション・インスティテュートが発表している「世界で評判の良い国ランキング」が参考になる。世界で評判の良い国ランキン2017で、アメリカは総合ランキングで10位後退した。その原因の一つとして、トランプ政権や大統領個人にあるとする意見もある。企業のトップや社員の評判が、その企業の存続を左右した事例は枚挙にいとまない。

 評判を測定する意義は、レピュテーションギャップの測定を基にした変革にあると思う。「当社の製品は、他社の製品よりも優れている」と思っていても、消費者がそう思っていなければ売上には繋がらない。消費者行動や意識の変化、環境変化に気付かずに、自社の過去の思いだけで会社経営を続けていたら、その企業は衰退することになろう。

 組織の中で継続的に変革を行い、PDCAサイクルをしっかり回していくことは容易ではない。組織の評判に対する取組みが、組織の意思決定とどのように関わり、財務業績だけでなく存続に如何なる影響をもたらすかが、今の私の研究テーマである。組織の存続と変革のために、会計と評判というエッセンスは面白いと思っている。

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