AIで通訳やPRパーソンは失業しないか?

公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会
     監事  西谷 武夫

 

文部科学省の資料によると、世界の総人口72億人のうち、英語を公用語・準公用語とするのは約3割の21億人にも上る。ちなみに、英語を母語とするのは4億人だが、それ以外の国で英語を使用言語とする人は、約3割り増しの5億人。実際、デジタルネットやSNS上での使用状況を含めると、その実態は想像を超えているに違いない。今や、英語は疑いなく世界語である。

ご案内のように、グローバル化が進む中で、日本は英語力強化に、官民挙げて懸命に努力している。さて、その成果はどれほどか。

ある民間団体の最近の調査によると、日本の英語力は何と世界 35 位の惨憺たる事態である。世界第3位の国民総生産(GDP)を誇る日本の英語力が、GDP12位のロシア、同 77位のウルグアイの英語力程度とは情けない。英語力が、韓国(27位)、香港(30位)、ベトナム(31 位)、台湾(33位)、インドネシア(3 位)より低いのだ。日本経済最盛時代には、韓国よりかなり上であったように思うが、今や突き放されているのが現状だ。

ちなみに、英語力ベストランキングでは、北欧の人口小国、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの順だそうだ。

以前、オランダに住んでいたときの話。来蘭する日本人記者に、オランダは世界で一番英語が通じる国である。だから、英国よりオランダの方が仕事しやすい、と直接投資の売り込みをしていた。英語が相当うまい人でも、イギリスへ行くと大変苦労する。本場の英語は、話すスピードが滅法速いし、慣用語句が違う、慣れた米語とはアクセントもかなり違う、などなどである。

英語は、オランダ人にとっても外国語であり、日本人の癖のある英語も分かって貰える。オランダ人に何かしてもらった時、Thank you.と言うと No thank youと返ってくる。これは学校で習った英語ではおかしい。しかし、この意味は誰にでもよく分かる。これで良いのではないのか。下手な英語で上等なのではないか。

これから、大学入試では、英語は読む・聞く(情報取得)だけでなく、書く・話す(発信)の 4 技能試験に変わる。これは、広報に従事するものとしては、後輩たちのグローバルな発信能力が高まるのだからうれしい限りである。

しかし、文科省の資料では、この4技能試験の世界標準になっている TOEFLでは、日本はモンゴル、北朝鮮並みの28位で、中国、韓国にかなり遅れている現状である。2020年のオリンピック・パラリンピック大会を迎えるのに、ホテル、レストラン、そしてタクシーの関係者まで、英
語の勉強に励んでいる。その中で、我々PR関係者の取り組みはどうなのか。

ところで、これからは AIが通訳をしてくれるそうだ。英語のみならず、中国、イタリア語何でもオーケー。確かに、便利にはなる。しかし、それで人と人のコミュニケーションはよいのか。幸せなのか。通訳は失職し、ひいては PR パーソンも不要になるのか心配だ。PRはコミュニケーションであり、人々の生活に不滅のものであると信じて来たのだが。

 

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