商いの心

パナソニック株式会社 パナソニックミュージアム 恵崎政裕

 

パナソニックミュージアムの中心、松下幸之助歴史館

 

当社が創業100周年を迎えた3月7日にパナソニックミュージアムが開所して3ヵ月、お陰様で連日大勢のお客様で賑わっています。
その核となる松下幸之助歴史館で、ぜひご覧になっていただきたい映像作品があります。それは『松下幸之助 商いの心』(以下、『商いの心』)。旧歴史館でも上映され、好評を博してきました。
この作品は、生涯一商人であることを貫いた幸之助の商売に対する考え方、極意を、紹介していきます。それは「お客様大事の心」に始まり、「お客様の声を聴く」、「魂を込めたものづくり」を経て、「サービスの尊さ」、「妥協を許さぬ利益観」へと続きます。
いずれも重要な主題ですが、注目すべきは「サービスの尊さ」でしょう。というのも、これは私たちが身を置く現代社会のありようにも直結するからです。

幸之助は近視眼的な見返りにとらわれることなく、奉仕の精神を尊び、賞賛します。
「私ども子供の時分に、よく親方から教えられたのは、商売人というものは『損して得とれ』ということです。『損して得とれ』とは今日のサービスです」「松下電器のすべての人は、サービス精神にこと欠いてはならない。それは、友人に対するサービスであり、会社に対するサービスであり、顧客に対するサービスであり、社会に対するサービスでもある。いっさいがサービスから始まる」
商い、すなわち経済行為は、お金が動く「交換」と心が動く「贈与」、これら二つの原理に拠って立ちます。そして、両者の調和、相互浸透があって、経済は健全なる発展を遂げていく。『商いの心』は、そのありさまを次のように描写します。
「物が動いて、お金が動いて、それで一応、商売は成り立つ。しかしもう一つ、根本的に大事なことは、物やお金とともに、人の心もまた、これに乗って移り動いていかなければならない。単に物を作り、物を売り、そしてお金を得ているというだけなら、商売とはまことに索漠としたものになってしまう」

しかるに今日、「物が動き、お金が動く」だけの交換が大手をふるい、「人の心の移り動き」に象徴される贈与が、片隅に追いやられている。そのような感が否めません。それが、人と人との絆の喪失、家族や地域社会の崩壊など、現代社会のかかえる難題を増幅させているのは明らかでしょう。
それゆえ私たちは、「いっさいがサービスから始まる」と喝破する幸之助の言葉を、贈与の復権を唱えるメッセージとして受け止め、しっかり噛みしめたいと思うのです。
こうした示唆に富む『商いの心』は、展示ホールの中央、「学びの杜」でご覧になっていただけます。幸之助94年の生涯を巡る展示を見終えたら、ちょっと一服、椅子に腰を下ろし、「生涯一商人」の声に耳を傾けてみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

松下幸之助10歳、奉公先・五代自転車商会の奥様と

 

 

松下幸之助79歳、『商いの心』の一場面

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